トヨタ自動車は、物流の「2024年問題」の解決に向け、海上コンテナ輸送の効率化支援サービス「OneStream(ワンストリーム)」の提供地域を拡大する。現在は、名古屋港(名古屋市港区)と博多港(福岡市博多区)の港湾輸送に関わる荷主や倉庫企業、物流業者などを対象に提供している。これを2025年度には他の五大港(東京港、横浜港、大阪港、神戸港)にも拡大し、導入メリットを訴求しながら新規顧客の獲得を目指す。
ワンストリームは、GPS(全地球測位システム)によりリアルタイムにトラックの位置情報を把握し荷役管理を支援したり、GPSや独自のアルゴリズム(計算手順)により、輸送条件や優先順位に合わせたリアルタイムで最適な配車提案を行うサービス。輸送の効率化や労働環境改善に貢献する。
従来は作業者が手書きで記録していたコンテナ番号などの情報も、「OCR」機能によってスマートフォン(スマホ)でのカメラ撮影だけで電子データ化できる。こうした機能により、ドライバー1人当たりの輸送本数を最大1.7倍に向上し、帳票の作成工数を2割削減するなど合理化効果が見込めるという。
事業の始まりは、約5年前に遡る。豊田章男社長(当時)が「トヨタをモビリティカンパニーに変革する」と宣言する中、社内公募で集まったメンバーがさまざまなテーマで新規事業を企画するプロジェクトが始動した。「カムリ」などの設計を担当していた足立聡史氏(現・新事業企画部、ワンストリーム代表)は、「人力やアナログに頼らざるを得ない港湾業務を効率化できないか」と同サービスを発案。約3年前からトライアルを重ね、23年春にサービスを始めた。
23年7月に名古屋港の統一ターミナルシステムがランサムウエアに感染し物流が混乱した際にも、取引先企業にコンテナの正確な位置を伝えることを実現。「助かった」との声が上がるなど信頼感の向上につなげたという。
足立氏は「TPS(トヨタ生産方式)の考えのほか、多くの企業との実証で得られた物流ノウハウを織り込んだ『現場の知恵』が強みのサービスだ」と自信を述べた。