フィジカルインターネットのイメージ(経済産業省の資料より)
物流「2024年問題」の解決を目指す

 豊田自動織機、伊藤忠商事、KDDI、三井不動産、三菱地所は、物流の「2024年問題」解決に向け、「フィジカルインターネット」の事業化を検討することで合意した。新会社を設立し、5年以内に数百億円規模の売上高を目指す。

 フィジカルインターネットは、占有回線ではなく、パケット単位で回線を共用して通信を効率化するインターネットの発想を物流(フィジカル)に適用した仕組み。2010年頃に欧州で提唱された。荷物や倉庫、車両の空き情報などをデジタル技術で可視化し、複数企業の倉庫やトラックをシェアした物流網で運ぶ共同配送として、輸送効率の向上が期待されている。

 政府は、2024年問題や少子高齢化によるドライバー不足を解決するため、フィジカルインターネットの実現に取り組んでいる。ロードマップ(行程表)では、25年までを準備期と位置付け、36~40年の完成を目指している。

 すでに加工食品や日用雑貨などのスーパーマーケット等ワーキンググループ(WG)、化学品WGなど、業界ごとに30年に向けたアクションプラン策定の議論に入っている。今回の5社も、WGでの取り組みが進む食品分野を皮切りに事業化を進める構えだ。

 今回の取り組みでは、伊藤忠商事が企画や営業、豊田自動織機がマテリアルハンドリング(運搬)機器の導入・整備、KDDIがサービス監視など通信環境の整備、三井不動産と三菱地所が中継倉庫拠点の構築を担う。

 フィジカルインターネットは輸送効率が高まる一方、結節点(ハブ)となる中継拠点までの短距離輸送が増える。豊田自動織機は、国内外で長年培った倉庫の自動化といった物流ソリューション事業のノウハウを生かし、自動運転フォークリフトなど拠点ごとに最適な機器を導入する。

 普及のカギを握るのは、荷役に用いるツールなどの標準化だ。フィジカルインターネットの好事例は海運コンテナとされる。物流業界では、縦横1100㍉㍍の正方形のパレットが主流になっており、政府のWGでも、このパレットに積み付けるのに適したコンテナ「スマートボックス」の仕様が検討されている。利便性を損なわずに物流を最適化するには、資材や什器などをどこまで統一するかなどの検討課題がありそうだ。

 多くの企業が参加するほど物流リソースを最適化する効果は大きくなる。豊田自動織機で物流ソリューションを担当するトヨタL&Fカンパニーの尾崎嵩グループ長は「5社だけで解決できる取り組みではない。どんどん仲間が集まってくれるとありがたい」と話す。

 このほかにも、日本郵便グループとセイノーグループが幹線輸送の共同運行に向けた業務提携で合意するなど、各社が物流の効率化で協調し始めた。トヨタ自動車系の部品メーカーでも、アイシンがダイセーエブリー二十四(田中孝昌社長、愛知県一宮市)と組み、共同配送マッチングサービスの実証を行う。

 社会課題の解決に向けて「オールジャパン」で連携できるか。輸送効率化は待ったなしだ。

(堀 友香)