「今日も怒られた!」「あんな言い方しなくても良いのに…」「あの上司とはうまくいかない」。仕事をする中でこんなことを上司、先輩に思ったことはないでしょうか?
上司からの指導や注意で自分の心が傷つき、上司との関係が微妙になってしまう。こんな若者から職場での人間関係について相談されることも少なくなく、本コラムを書いている私自身も前述ように思ったことがあります。注意をしている上司の表情、言い方が受け入れられず自ら距離を置いてしまったことも…。正直やってられないなと思ったこともあります。
しかし、今では後悔しています。もっとその上司が言いたかったことに気付けば良かったと。
受け取る側に問題は?
上司の注意や指導は、中には自分のストレスの捌け口で部下に対して厳しく接する人もいるかもしれませんが、部下の成長を望んで厳しく指導する人もいます。まさしく私の上司は後者でした。もちろん指導を伝える側の上司に問題がある場合もありますが、受け取る側に問題があったりもします。それは、受け取る側が伝える側の表面的な部分だけを見ている可能性があるということです。
心の声を読む
こんな話があります。ある日、自分の子どもが2つのリンゴを手に持っていました。それを見た母親が子どもに1つ欲しいとお願いしました。すると子どもは持っていた2つのリンゴを両方とも一口ずつかじってしまったのです。それを見た母親は子どもが独り占めしようと両方のリンゴをかじったと思い悲しくなったが、表情には出さず、ただ子どもを見つめていました。子どもはリンゴの味を確かめている。すると子どもは1つのリンゴを母親に差し出したのです。「ママ、こっちのリンゴの方が甘かったよ」と言いながら。
人はつい相手の表面的な行動や言動に反応してしまいますが、大事なのはその行動や言動の裏にある真意であり、見逃さないようにしたいものです。相手が何を伝えたかったのか、何に気付いてほしかったのかと、相手の心の声を読むこともコミュニケーションにおいて必要なのです。
冷静な気持ちで
これはお客さま対応でも同じことが言えます。お客さまが発した言葉の本当の心の声に応えることが真のセールスパーソンの役目でもあります。商談において伝える技術も必要ですが、セールスパーソンに必須なのが聴く力。傾聴力です。傾聴力の中には相手の真意を感じ取ることも含まれています。
相手が全てを話してくれるとは限りません。私の上司も決して指導上手だったとは言えませんでしたが、あの時の言葉の意味、長い時間を要してしまったが今ではあの言葉の意味を理解することができます。そしてもっとその意味を早く理解するべきだったと後悔もしています。なぜなら、その上司の言葉が今の私の原動力にもなっていますから。
相手の表面的な部分だけで判断して感情的になるのではなく、相手の伝えたかったことは何だったのかを冷静に考えるようにしてほしいと感じます。
文:株式会社プログレス 江原忠宏
〈プロフィル〉えはら・ただひろ 2006年東海大学電子情報学部卒、同年国産ディーラー入社。営業職、店長を務めるも、17年5月輸入車ディーラーに転職。入社2年目に係長昇進、3年連続で販売優秀者表彰。その後人材育成にやりがいを見出し、2020年プログレス入社。「人材を『人財』に」をテーマに活動中。静岡県出身、41歳。