北米に投入した「Nシリーズ」のEV

 いすゞ自動車は、グローバルで生産体制の最適化を進める。北米工場は2027年をめどに生産能力を増強し、第2工場の新設も検討する。合わせて電気トラック(EVトラック)の電池も、米政府の政策をにらみながら現地調達化を進めていく。国内も子会社のUDトラックスの上尾工場(埼玉県上尾市)へ設備投資を行う。いすゞは30年度に車両販売など既存事業で売上高5兆円以上を目標に掲げている。収益力強化に不可欠な供給体制の最適化を図ることで目標達成につなげていく。

 同社は30年度に商用車を世界で45万台以上販売し、うち北米では5万台を販売する計画を掲げる。現状は米ミシガン州の工場で年間約2万台生産し、藤沢工場(神奈川県藤沢市)からも約2万台輸出している。今後の需要拡大や主力生産拠点である藤沢工場の供給力を考慮しながら、現地の生産能力を拡充していく。

 さらに米国ではEVトラック用電池を現地調達する体制を整える。北米地域内での電池部材の調達や製造は米インフレ抑制法(IRA)で税制優遇の対象となるほか、「クラス2B」(車両総重量3.8㌧)以上の大型車が27年生産車から米環境保護庁(EPA)による温室効果ガス排出規制「フェーズ3」の対象となることもあり、今後米国ではEVトラックの需要が拡大するとみている。今年8月から北米で販売している「Nシリーズ」(日本名エルフ)のEVは日本で調達した電池を搭載しているが、26年発売予定の「Fシリーズ」(日本名フォワード)のEVには米カミンズの傘下ブランド「アクセレラ」のリン酸鉄リチウム(LFP)電池を搭載する予定だ。

 国内の生産体制も最適化を進める。いすゞとUDでプラットフォームを共通化した大型車を28年に発売する予定で、これに合わせて製造機能を上尾工場へと一部移管する考え。同工場は1962年操業と古く、設備更新を進めて供給力を強化する。

 同社は30年度まで世界の生産拠点に計5900億円を投じる計画。ピックアップトラックの生産拠点であるタイ工場などアジアにも計2千億円を投じ、設備更新と省人化を進めて収益力を高めていく。

 足元ではタイの金融引き締めによる市場低迷や米大統領選など、不透明な事業環境が続く。ただ、南真介社長は、30年度に世界販売85万台を目指す方針について「これまでの施策の延長線上でできると思っている」と話す。

(2024/9/4修正)