日本自動車会議所(内山田竹志会長)は、パリ・パラリンピック日本代表選手団団長の田口亜希氏を招き、「パラリンピックと共生社会の実現」と題した講演会を開催した。田口氏はライフル射撃競技の日本代表選手として、パラリンピックに出場した経験を持つ。自身の経験を踏まえ、健常者と障害者が共生する社会について語った。

 田口氏は大学を卒業後、郵船クルーズに入社し、客船「飛鳥」にパーサーとして乗務。25歳のとき、脊髄の血管の病気を発症し、以来、車いすでの生活を送っている。知人の誘いをきっかけに始めた射撃競技で、2004年のアテネから、北京、ロンドンと3大会連続でパラリンピックに出場。アテネで7位、北京で8位に入賞した。現在は日本財団パラスポーツサポートセンターに競技団体支援部ディレクターとして勤務している。

 講演では自身の体験を織り交ぜながら、パラリンピックと社会のバリアフリー化について語った。日本では東京大会の開催が2013年に決定して以降、公共施設などのバリアフリー化が進んでいる。半面、障害者用の駐車場やトイレを使用する健常者が少なくないことを挙げ、「ハードのバリアフリー化とソフトのバリアフリー化は、まだイコールになっていない」と指摘した。その上で、「私たち(障害者)も文句を言うのではなく、きちんと伝えていくことが大切」と話した。

 また、「共生社会」という言葉が、一般的には健常者が障害者を慮ったり、助けたりすることと思われているとし、「障害の有無に関わらず、それぞれができることで思いやりを持ったり、助けたりできる社会を共生社会というのではないか」との考えを示した。

 28日から9月8日まで開催されるパリ・パラリンピックには、日本から175人の選手が参加する。田口氏は、「無限の可能性を体現するパラアスリートの魅力を通じ、より良い社会をつくるための社会変革を生み出していきたい」と意気込みを語った。