日産自動車は20日、日本旅行などともに、多くの企業や地域が連携して、旅行・観光での二酸化炭素(CO2)排出量を実質的に低減する活動を推進すると発表した。「グリーンジャーニーツアー」の第1弾として「熊本・阿蘇」と「伊勢志摩」の旅行商品を日本旅行が同日、発売した。2033年までに旅先を全国200エリアに拡大し、延べ利用者数を1千万人以上に増やす計画だ。最終的には50年までに国内旅行でのCO2排出量ネットゼロを目指す。

 日産と日本旅行の2社が発起人となり、産学官と地域の連携で旅先での移動や滞在時のCO2排出を減らすツアーを手掛ける「グリーンジャーニー推進委員会」を発足した=写真。東日本旅客鉄道(JR東日本)や日本貨物鉄道(JR貨物)などのJRグループ、地域で働きたい旅行者と人手不足の地域をマッチングするサービスを展開しているおてつたび(永岡里菜CEO、東京都渋谷区)など、14社による共同体で構成する。環境省、東北大学とも連携する。

 同委員会は、旅行でのCO2排出量削減や環境保全型アクティビティの開発、持続可能性を重視した地域文化の発展に取り組む。旅行者が「とことん楽しむ」ことと、サステナブルを両立する新しい旅のスタイルをグリーンジャーニーと名付け「国内旅行のスタンダードにする」(日本旅行の小野谷悦光社長)方針だ。

 カーボンニュートラル(温室効果ガス排出量実質ゼロ)対応が求められる中、旅行・観光産業は世界のCO2排出量の約1割を占めており、このうちの大半を移動中の旅行者が排出している。日産は走行中のCO2排出量ゼロのEVレンタカーの活用を促すとともに、ツアーを提供する地域の自治体と連携してEV用充電インフラ整備も推進していく方針だ。

 国内新車市場でのEV比率は低いままだが、自然豊かな環境でEVを利用する機会を提供することで、走行性能などを体感してもらう。スマートフォンのアプリを使い、地域内のEV充電ステーションの位置情報なども提供する。

 ツアー商品で提供するEVレンタカーは当面、「リーフ」などの日産車だけだが「考え方に賛同して理念を共有できる企業は声を掛けてほしい」(日産の神田昌明常務執行役員)としており、他の自動車メーカーなどにも門戸を開放する。交通事業者や再生可能エネルギー事業者を含め、多くの企業や団体に参画を促す考えだ。

 欧米を中心に環境に配慮するサステナブルツーリズムへの関心は高まっているものの、日本では浸透していない。同委員会の参画企業はインバウンドなどによる観光需要が高まっている時期に企業の枠を超えて国内旅行のサステナブル化を推進、国内旅行での環境意識の醸成を図る。ツアーで使用するEVレンタカーには、グリーンジャーニーのシンボルでもある「ムーミン」シリーズに登場する自由な旅人「スナフキン」のステッカーを添付する。

 グリーンジャーニーでは、移動でのEV活用やサステナブルなグルメ、環境に配慮したアクティビティなど、従来のカーボンオフセットによるCO2削減ではなく、実際に排出するCO2を減らすことが特徴だ。2030年までに旅行での移動のCO2排出量を累計4771㌧削減できる見込みという。