今年1月に神奈川県内で実証した自動運転「レベル2」の試験車両

 いすゞ自動車は、2025年度をめどに自動運転「レベル4」(特定条件下における完全自動運転)のバスの公道実証を始める。現在は「レベル2」(高度な運転支援)だが、認識精度の向上や冗長システムの追加などシステムを改良し、ドライバーが乗車しない運行を目指す。運転手不足で路線バスの減便などが相次ぐ中、開発を加速し、2027年度を予定する自動運転の事業化につなげる。

 レベル4に向け、まずは認識精度の向上を図る。今年1月に神奈川県平塚市で実施した実証では、路肩を走行する自転車や歩行者の認識精度に課題があった。このため、LiDAR(ライダー、レーザースキャナー)とカメラのデータを統合制御するとともに、信号機情報も活用して認識精度を高める。2024年度内に公道実証し、精度を検証する。

 その上で、2025年度には当局の認可を取得し、レベル4の実証を始める計画。センサーや保安部品などの冗長性を確保し、自動運転の実証を行う。交差点の有無など走行条件は今後の技術開発の状況に合わせて決める。

 いすゞは、2027年度にトラック・バスの自動運転サービスを事業化する方針を今年4月に公表した。近く自動運転に特化した開発部門も立ち上げるほか、実証パートナーでもあるティアフォーにも60億円を出資し、開発体制を強化している。

 政府は2025年度に全国50カ所、2027年度に全国100カ所で自動運転サービスを行う目標を掲げる。バスの自動運転レベル4は、ソフトバンク子会社などスタートアップがすでに認可を取得済みだが、全国にアフターサービス網を構築する完成車メーカーが自動運転サービスに参入すれば、普及に弾みがつくことも期待される。人手不足以外にもバス事業を取り巻く環境は厳しく、事業モデルの改善も課題だが、いすゞとしては、社会課題の解決と将来的な収益の創出に向けて開発を急ぐ。