佐藤恒治社長率いる新たな経営体制の1年目は好業績を残す結果となった。8日、佐藤社長は「商品を軸にした経営と、長年積み上げてきた経営基盤が実を結んだ」と手応えを語った。前社長の豊田章男会長が14年にわたって蒔いてきた種が大きく実った形だ。佐藤体制の2年目は、販売店や仕入先への支援も含めた成長投資として2兆円を投じ、中長期な目線に立った取り組みを進めることになる。
「モビリティカンパニーへの変革というビジョンを『具体』に落とす」―。佐藤社長はトップ就任時に経営テーマとして「継承と進化」を掲げ、豊田会長が築いた強固な収益基盤を維持しつつ、電気自動車(EV)や新たなモビリティサービスに挑戦する「モビリティカンパニーへの変革」を強調してきた。就任時に示したビジョンを具体化するため、今年は強固な収益基盤が生み出す利益をさまざまな投資に振り分けていく方針だ。
佐藤社長は、パワートレインの全方位戦略を進める上で「ミッシングピース」となっているEVの商品力強化を打ち出し、次世代EV開発で培った知見をプラグインハイブリッド車(PHV)へも応用する考えを示した。また「次世代エンジンの開発も積極的に進める」と、改めて全方位戦略を強調した。スマートフォンのようにソフトウエアが車両の価値を左右する「ソフトウエア・ディファインド・ビークル(SDV)」と車載OS(基本ソフト)「アリーン」の開発については「自動車産業を超えた戦略的パートナーシップを検討していく」と語った。2025年3月期の設備投資と研究開発費は前期から5千億円上乗せし、1兆7千億円を投じる。
新体制の1年目は、グループ企業の不正が相次ぎ発覚し対応にも追われた。24年は「挑戦の余力づくりと足場固め」の年として、現場の負荷となっている業務の見直しを進めている。佐藤社長は「事業構造を大きく変える余力がないことが課題だ」と語り、生み出した余力で働き方の抜本的な見直しに着手し、モビリティカンパニーへの変革を目指す。こうした取り組みをグループ全体に広げるため、25年3月期に仕入先や販売店の労務費負担、従業員の環境改善などの費用として3千億円を充てる。