中国ではeアクスルの価格競争が激しい

 ニデックは、電気自動車(EV)向け「eアクスル」関連の事業計画を見直す。中国での価格競争が激しく、損益が大幅に悪化したことから昨秋には数量より収益を重視する方針に転換した。今後はeアクスルの納入先を絞り込むとともに、開発日程も遅らせる。代わりにeアクスル周辺部品を販売する事業や、電子化が進む自動車向けの新事業を開拓していく。

 第3世代eアクスルを今年6月に提供する予定だったが計画を見直す。今秋に出力135㌔㍗(約184馬力)のeアクスルを投入するが、その後に計画していた70㌔㍗(約95馬力)、50㌔㍗(約68馬力)、200㌔㍗(約272馬力)の各製品の投入計画は白紙に戻す。

 第3世代はモーター、インバーター、減速機に加えて、DC―DCコンバーターやPTCヒーターなどを加えた「7イン1」となり、温度制御は空冷方式となる。eアクスルの機能を増やす「Xイン1」化についても、中国以外の自動車メーカーの関心が低いため計画を見直すが、研究開発は続ける。今秋に油冷方式の開発にも着手し、コストより性能を重視していく。

 同社は、EV市場が2025年以降に急拡大すると想定し、eアクスル関連を事業の柱の一つにしようとシェア拡大を優先させてきた。しかし、中国でEVの値下げ競争が激しくなるに連れeアクスルの低価格化が進み、収益重視に転換した。今後は中国での供給先を広州汽車や日系と広州汽車の合弁会社に絞り込む。

 24年3月期の車載事業の損益は311億円の赤字だった。今後、中国での生産体制の見直しも予想される。

 今後はeアクスル関連の部品市場も開拓する。まず、ステランティスとニデックのeアクスル合弁工場向けに、中国で製造したステーター(固定子)を今年後半から供給する。中国で構築したeアクスルのサプライチェーン(供給網)を活用し、部品事業を本格展開する。ステアリング・バイ・ワイヤや電動ブレーキ用など、次世代車に用いられるモーターやアクチュエーター(作動器)の需要を開拓し、車載事業の成長を目指す。

 ニデックはこれまで「25年がEV普及の分水嶺になる」と予想して、eアクスル関連事業を強化してきたが「5年ぐらいはズレるかもしれない」(同社幹部)としている。

 ニデックが23日発表した24年3月期の連結業績は売上高が前年同期比4.7%増の2兆3482億円と過去最高だった。収益では駆動用モーター関連事業の構造改革費用598億円を計上したが、車載を除く事業が好調だったことから営業利益は同63.1%増の1631億円だった。今期は売上高2兆4千億円(前期比2.2%増)、営業利益2300億円(同41.0%増)を見込む。