先日、ネット環境に不具合が生じ、サービス事業者に対策を聞きたくて電話番号を探した。しかし、電話番号の表記が見当たらず、サポートセンターにメールで問合わせた。半日後に返信メールで回答があり、何とか用は済んだが、モヤモヤした状態で一日を過ごすこととなった。

 ネット販売は、人手を抑え人件費を削減することが大きな目的であるから、当然、そこではコールセンターのようなリアルタイムに返答できるスタッフは充実していない。人件費削減によって販価を抑えているのは理解できるが、緊急時の対応くらいは何とかしてほしいものだ。

 自動車業界は、今でも多くが対面販売だ。アフターフォローでも担当店舗・担当者などの〝顔〟が見えるサービスが提供され、それを強みに販売が行われる。突然トラブルが発生しても、どこの店舗の誰宛てに連絡すれば良いかが明確。昔ほどではないが「何かあっても何とかしてくれる」と店や担当者を頼るお客さまも少なくない。

 一方で、多くの販売店や専業店では人材不足のため、昔のようにサービススタッフが客先に急行できる体制を整えられない。それでも、担当者ができる限り、もろもろの手配を行う店は多い。

 最近、既納客からクルマの不調を訴える電話がかかってきても、「持ってきてくれないと分からない」「工場の予定がいっぱいなので今はみることができない」「JAFに依頼してこちらまで…」といった言葉をよく聞く。いずれの回答も現状の業界事情を鑑みると致し方ないと言える。しかし、お客さま目線で見ると「売る時だけアフターサービスの充実をうたっておきながら…」とか「リアル店舗の強みを強調していたくせに嘘ばっかり」となる。

 すぐに取りに行けないにしても、引き取りの手配を行うくらいはしたい。旅行や仕事で出先からの連絡ならともかく、自宅に置いてあるクルマであれば、改めて電話を入れ、様子を見に訪問するといった対応などが、お客さまに心を寄せるということではないだろうか。それがなければ、ネットで買う家電製品とあまり変わらない。「結局、どこで買っても同じ」になってしまう。そして、メンテナンスや車検は近所の工場で済ませればよいか…と。

 クルマは顧客サービスとセットで販売することが今までの業界の常識だ。これを自ら覆してしまうと、現状のディーラーや専業店のスタイルは維持しづらくなり、企業としての存続も危ぶまれる。それが業界の新たな形と言われれば、それまでだが。

 既に多くの家電やパソコンがそうであるように、お客さまはクルマにもデザインと安さだけを求め、大きく目立つ販売店で価格競合させて買うか、ネットで買うようになるのではないか。そんなことにならぬよう、急場の顧客フォローもしっかりとしていただきたい。

 文:株式会社プログレス

   大久保政彦