東福寺厚樹社長
6月末に発売する3車種目の乗用EV「シール」

 中国・比亜迪(BYD)傘下で日本の乗用車事業を手がけるBYDオートジャパン(横浜市神奈川区)の東福寺厚樹社長は10日、日刊自動車新聞などのインタビューに応じ、2024年度から新しくなった政府の「クリーンエネルギー自動車(CEV)補助金制度」で、BYD車の補助額が大幅に減額されたことに触れ「ショッキングな通知だった」と語った。評価7項目のうち、「充電インフラ整備」で厳しい評価が出たことを明らかにした。

 CEV補助金ではこれまで「ドルフィン」が65万円、「ATTO3」は65万~85万円を支給されてきたが、今年度からは一律35万円になった。東福寺社長は「政府への提出書類を準備していて満額(85万円)は難しいと思ったが、ここまで下がるとは予想外だった」と述べた。

 9日に計算根拠が届いたという。昨年は1446台を登録したが、充電器は15基程度のみ。1台当たりの設置台数は少ない。「充電器メーカーが大量の注文を抱えていて(なかなか設置が進まず)、ここは簡単に点数を増やすことはできない」と話した。200点満点中130点で満額の85万円が支給される仕組みだが、満額は今後も厳しいと同社はみている。

 ただ「サイバーセキュリティへの対応」の項目では、今後改善していく計画なので、次の審査に間に合えば5万~10万円の上積みを獲得していくことはできるのではないかという。

 「整備人材の育成」について、東福寺社長は「零点かと思ったが点数をもらっていた。弊社の技術顧問が整備学校でのEV講座の取り組みを始めた。それが評価されていた」と話した。「整備の体制/質の確保」の項目では、バッテリーの素材、生産場所、サプライヤーなど求められたデータはすべて回答し「そこでの減点はなかったと思う」と述べた。

 同社は補助金を含めた実質価格が300万円を切ることが「売り」だった。補助金の削減でそれがかなわなくなる。対策として4月1日から「今だけ、0(ゼロ)金利キャンペーン」を始めた。一定の条件はあるが、同社によると4年間で20万円程度、金利分で得するという。また、女優の長澤まさみさんを起用したテレビコマーシャルを12日から全国放映し、知名度アップをねらう。

 同社はまた、3車種目の乗用EV「シール」を6月末に発売することも明らかにした。