ビッグモーター(和泉伸二社長、東京都多摩市)の自動車保険金の不正請求問題で、金融庁から業務改善命令を受けた損害保険ジャパンと親会社のSOMPOホールディングス(HD)は、同庁に業務改善計画を提出した。損保ジャパンは「監査等委員会設置会社」に移行し、廃止していた社外取締役を復活する。親会社の取締役と損保ジャパンの取締役の兼任はこれまで1人だったが、4人に増やし、親会社の経営管理体制を強化する計画だ。

 損保ジャパンは現在、会社法で定められる会社形態で「監査役会設置会社」となっているが、4月から「監査等委員会設置会社」に移行する。取締役会で議決権を有する社外取締役の増員や監査等委員会が、取締役の指名・報酬において意見陳述権を有することを通じ、経営の透明性、公正性の向上や監督機能を高める。

 損保ジャパンでは、大規模な兼業保険代理店であったビッグモーターの保険販売力を重視するあまり、同社からの保険金の不正請求に厳しい対応を取れなかった。また、現場では知られていた同社の不正の実態を会社の上層部と共有し、より良い意思決定に反映できなかったことが課題になっていた。

 ビッグモーターの修理見積額を、原則そのまま受け入れる「簡易調査」は廃止する。また、損害調査の業務に関わる専門職の「技術アジャスター」を増員する。また、社内で立場が弱かった保険金サービス部門の独立性を確保。大規模兼業代理店の不正に、時には目をつぶろうとしがちなこともあった営業部門に対して、顧客目線で厳しく対応できるようにする。

 また、これまでは保険代理店に対しての手数料は、保険販売額が評価の軸になっていたが、品質についての反映部分を大きくする。

 親会社のSOMPO HDについては、結果的に子会社の重要な情報が上がらなかったことが問題視されていた。子会社からの重要事項報告ルールを再整備するとともに、リスク関係の情報を子会社と共有しやすくするために、コンプライアンス(法令順守)、内部監査担当役員を設置する。

 不祥事が発覚した2023年の夏以降、指摘されていた問題点への方針は示されたが、基本的には想定された内容になっている。ルールはあっても形骸化していた課題も多い。今後はいかに実効性を高めて、長期的・継続的に機能させることができるかが鍵になる。