損保ジャパン本社
ビッグモーター問題では損保ジャパンの対応が問題視されていた

ビッグモーター(和泉伸二社長、東京都多摩市)の自動車保険金の不正請求問題で金融庁は1月25日、損害保険ジャパンと親会社のSOMPOホールディングス(HD)に対して、保険業法に基づく行政処分「業務改善命令」を出した。業務の改善計画について2024年3月15日までに提出するよう求めた。経営責任の明確化も求めた。

同庁は損保ジャパンには23年9月から、HDには同11月から立ち入り検査を行っていた。

同庁の発表によると損保ジャパンは「内部統制が崩壊していると評価せざるをえない実態が認められた」と評価された。親会社のHDについては「ビッグモーターの問題を把握したあとも、子会社に関する踏み込んだ実態把握や情報分析を行っていないなど能動的なアクションが不足しており、損保ジャパンに対する経営管理が十分に機能していない実態が認められる」とした。

HDの櫻田謙悟会長は23年9月の会見で「(ビッグモーターの問題について)22年8月に報道があるまで知らなかった」と強調したが、同庁は「知らなかったこと自体が(子会社管理上の)問題だ」と指摘した。

損保ジャパンについては、歴代社長を含む経営陣の下で以下の3つの「企業文化」が醸成されていた、とした。(1)顧客の利益より自社の営業成績・利益に価値を置く企業文化(2)社長等の上司の決定には異議を唱えない上位下達の企業文化(3)「不芳情報」が経営陣や親会社といった経営管理の責務を担うものに対して適時・適切に報告されない企業文化、といったもの。

また、現場(第1線)による自律的管理が機能しておらず、リスクを能動的に把握してけん制を働かせるべきコンプライアンス部門(第2線)、内部監査部門(第3線)といったリスク防衛のための「3線」全てが実体的に機能不全に陥っていた、とした。

損保ジャパンはビッグモーターの不正を知りながら修理車両の紹介を再開した。ビッグモーターの不正についてほかの大手2社と連携して実態調査を進めようとしていたが、同社だけが方針転換した。取締役会にも諮らなかった。ビッグモーターの修理見積を原則そのまま受け入れる「簡易調査」も導入し、その事後チェック体制もずさんな状態だった。その結果、保険契約者保護の観点から問題がある、という問題点が指摘されていた。

また、ビッグモーターを保険契約者とする保険契約(自動車管理者賠償責任保険)では、ビッグモーターを優遇し、厳格な調査をしないまま保険金を支払っているケースがあった。一方で、ほかの自動車販売業者については、詳細な調査をしないまま保険金を支払わない「不適切な不払い」となっている可能性のある事案がある、と公表した。

ひどい経営実態だったのに今回「業務停止命令」が出されなかったことについて金融庁は「今回の措置でも十分重く広範な措置」とした。

企業文化については「白川(儀一)社長だけでなく、その前の西澤(敬二)社長、櫻田(謙悟)社長(当時)の時代から醸成されてきたものだ」と述べた。さらに「同社は合併が繰り返されてきて、自己保身を優先する面がある」とも指摘した。

今回の問題では最高実力者のグループCEO、HDの櫻田会長の経営責任と去就が焦点になっている。業務改善命令を受けてHDは25日、26日に会見を行うと発表した。

(小山田 研慈)

(2024/1/25更新)