「ジョイントが折れたんだよ」―。時代は昭和33年、場所は北海道のオロフレ峠。国産の新車が峠道で立ち往生。ある人物が、助手席からエンジンの音と運転手の操作で故障の原因を言い当てた◆ある人物とは作家の司馬遼太郎。当時は産経新聞の記者で、作家の今東光と画家の佐藤泰治に同行して札幌から登別に向かっていた。モータリゼーション前夜のこと、自動車は珍しく、運転…