MX-30ロータリーEV
2ローター方式の発電用ロータリーエンジンを搭載する「アイコニックSP」

マツダは、小型SUVのプラグインハイブリッド車(PHV)「MX-30ロータリーEV」を11月に発売した。発電専用とはいえ11年ぶりにロータリーエンジンを復活させ、「マツダファン」の話題を集めた。マツダは「CX-60」にもPHVを設定する。どちらもPHVだが、異なる電動駆動システムを採用し、乗り味もそれぞれ異なる。2台を市街地で試乗した。

MX-30ロータリーEVが採用するシリーズ式ハイブリッドシステムは、100%モーターで走行する。搭載するエンジンは、発電専用の新開発したロータリーエンジン「8C型」。1ローターで排気量は830ccとした。他社では、日産自動車の「ノート」や「セレナ」などに搭載する「eパワー」もシリーズ式ハイブリッドだ。

MX-30の場合は、外部から電源をつないで充電できるプラグイン機能も有する。EVモードで走行できる航続距離は107km(WLTCモード)と、国内で販売する日本メーカーのPHVでは最も長いため、PHVでありながら使い方によっては電気自動車(EV)として利用することができる。遠出しない日常使いでは、EV走行が主体となるためエンジンの出番がほとんどない。

搭載するロータリーエンジンは、駆動用では無いため、往年のロータリーファンからすると「物足りない感」も否めない。開発責任者の上藤和佳子主査は「発電用に特化しており、今回のロータリーエンジンは黒子としての役割が大きい」と話す。

一方、CX-60は、パラレル式ハイブリッドシステムを採用し、モーター走行だけでなく駆動にもエンジンを活用し、エンジンならではのダイレクトな走行感も楽しむことができる。FR(後輪駆動)の採用により長距離のドライブにも適しているという。スポーツモードに設定すれば、エンジンとモーターの組み合わせで力強い走行を体感できる。

2台に共通して、市街地走行ではノーマルモードでは、エンジンがほとんど始動しないため、試乗時間の大半は、EV走行だった。MX-30では、EV走行時のサウンドにこだわり、独自に開発した「EVサウンド」を運転操作に応じて流す。EV走行でも「走る歓び」をドライバーに訴求する。

マツダは、電動化時代に発電用エンジンとしてロータリーエンジンを復活させた。ロータリーエンジンは、水素や合成燃料などとの相性が良いとされている。カーボンニュートラル(温室効果ガス排出実質ゼロ)時代にロータリーエンジンがどう生かされることになるか、注目が集まる。

(織部 泰)