岩田圭一社長

 住友化学は業績回復と財務体質の強化を急ぐ。2024年3月期の売上高予想などをこのほど大幅に下方修正した。岩田圭一社長は「創業以来の危機的な状況だ」とこのほど開いた経営戦略説明会で語った。すでに「短期集中業績改善策」に着手しており、24年度までに業績を立て直す。24年度初めには「抜本的構造改革」をまとめ、同年度中に新中期経営計画も発表する予定だ。

 通期業績予想は、売上高を従来予想から2千億円減の2兆7千億円、営業利益は1450億円減の1250億円の営業損失、当期損益も100億円の黒字から950億円の赤字予想とした。石油化学品などの販売低迷が響いた。

 業績改善策では、事業売却を視野に入れた事業の再構築を急ぐ。検討対象は約30件で、すでに大型液晶ディスプレー用偏光板については生産能力の3割にあたるラインの停止を決定し、有機ELディスプレーや車載用途へ経営資源を移す。今後も不採算事業に限らず再編を進める。これらの取り組みにより、1200億円のキャッシュ創出と500億円のコア営業利益への収益効果を見込む。財務体質の強化も進める。在庫削減や投融資の圧縮、政策保有株などの資産売却などで約4千億円のキャッシュをねん出する。

 構造改革も検討内容の一部を説明した。第一弾として、石油化学部門を含む「国内エッセンシャルケミカル事業」を再編する。環境負荷低減を軸にバイオエタノール由来のエチレン・プロピレンプラントの新設や、既存エチレンプラントの共同運営などの可能性を検討し、合理化と脱炭素化を同時に進める方針だ。

 業績不振を踏まえ、24年3月まで役員賞与を不支給とし、十倉雅和会長と岩田社長が役員報酬を11月から5カ月間、基本報酬月額の10%を自主返上することも表明した。