値上げや構造改革で収益力の回復を図る

 自動車事業を手がける化学・繊維メーカーの業績が悪化している。大手12社のうち10社が通期の売上高と営業利益を下方修正した。UBEと帝人は最終赤字に転落する。世界経済の減速は共通だが、資源価格の高騰や操業トラブルなどが個別に各社の利益を押し下げた格好だ。各社は値上げによるコスト転嫁のほか、構造改革を急ぎ、収益力の回復を図る考えだ。

 12社のうち、信越化学とJSPをのぞく10社が通期の売上高と営業利益を下方修正した。住友化学は前回公表値の営業利益1150億円、当期純利益1050億円からそれぞれ収支トントンに修正した。主に石油化学部門での市況悪化が要因だ。岩田圭一社長は「2013年以降、黒字を確保してきただけに事態を重く受け止めている」と語った。特に、石油化学部門を含む「エッセンシャルケミカルズセグメント」では「中国の経済動向がポイントになる」(岩田社長)とする。仮に需要が増えても中国拠点の供給能力が追いつかない可能性があり、需給を注視する必要があるという。

 最終赤字となる帝人では、「マテリアルセグメント」の業績が大きく下振れる見通しだ。自動車メーカーの減産による販売数量の低下も響くが、アラミド原料工場の火災による生産ラインの停止、複合成形材料部門での設備故障による生産立ち上げの遅延が重なる。売上高は、前回公表値から200億円減の1兆300億円、営業利益は同150億円減の100億円の見通し。営業利益は、オイルショックの影響を受けた1977年以来、約45年ぶりの低水準となる。

 UBEは、セメント事業分離による通期の持ち分法投資損益が原材料高騰の直撃を受けて260億円のマイナスとなり、60億円の最終赤字に転落する。

 各社は「市況に左右されにくいポートフォリオを目指した再構築が必要」(住友化学の岩田社長)として収益構造の改革を急ぐ。

 帝人は、アラミドと複合成形材料、ヘルスケアの3部門で収益改善を図る。複合成形材料では、成形品の高外観性など、技術を生かせる高付加価値プロジェクトにシフトし、23年度で130億円の利益回復を見込む。収益改善が思うように進まない場合は撤退や事業売却を検討する。

 三菱ケミカルグループは、25年度までに1千億円のコストを削減する方針で工場閉鎖や拠点の統合などを進めている。通期業績予想は今回、売上高で前回公表値から21億円減の451億円、営業利益は17億円減の7億円、当期純利益が10億円減の3億円に下方修正したが、ジョンマーク・ギルソン社長は「(コスト構造改革目標を)1500億円程度まで目標を高められそうだ」と語った。