2035年には4500億円市場に

 矢野経済研究所(水越孝社長、東京都中野区)は「空飛ぶクルマ部品市場」の調査結果をまとめた。2025年の国内における市場規模は45億6千万円になると予測した。「25年日本国際博覧会(大阪・関西万博)」を契機に特定地域で社会実装が進み、関連部品市場も拡大が見込まれる。35年には25年比99・3倍の4527億6千万円にまで市場が拡大すると予想した。

 4月から7月にかけ、空飛ぶクルマのモーター関連部品や機体素材、安全装置などを取り扱う企業を対象にしたヒアリングや文献調査を通じて予測をまとめた。

 空飛ぶクルマは一般に電動の垂直離発着機(eVTOL)を指す。日本では大阪・関西万博で初の商業運行が予定されている。運行事業者にはトヨタ自動車が出資する米ジョビー・アビエーションとANAホールディングス連合、日本航空、丸紅、スカイドライブ(福澤知浩CEO、愛知県豊田市)の4グループが選ばれた。

 矢野経済によると、空飛ぶクルマの本格的な実装検討や関連の施設建設といった動きは23年度以降に進む。万博終了後には東京を含む関東圏での実装も想定されるという。

 特に事業開始の25年から30年までの5年間は、機体の安全性を重視した開発が必要とされ、関連部品市場の成長率も最も高いと見込む。30年頃からは既存航空機を含めて電動化が進んでいくと見られ、関連部品の開発ペースや技術が飛躍的に高まる可能性があるという。

 懸念材料もある。機体に使用される部品性能の不足やコスト高、安全装置の開発遅れ、機体メーカーの資金調達の難航など、矢野経済は開発段階での課題が多いと指摘し「国や行政からのさらなる補助金や援助、複数の大学や民間企業が参画するプロジェクトの立ち上げ、導入企業による情報・技術共有などが不可欠で、それが開発環境の整備や開発速度を速めることにつながる」とした。