電子プラットフォームは、車載OSの機能や車両コストなどを左右する

 トヨタ自動車は、2026年に発売する次世代型の電気自動車(EV)に新たな電子プラットフォーム(PF)を搭載する。EV用に最適化した電子PFと車載基本ソフト(OS)「アリーン」を組み合わせてEVの性能や機能を一気に高める。電子PFの実装に向け、電子部品や電子制御ユニット(ECU)を担うデンソーとの新組織も立ち上げる。トヨタで年間1千万台、協業先を含めると1500万台近い事業規模も生かし、ソフトが自動車の性能を主導するSDV(ソフトウエア・デファインド・ビークル)領域で先行する米テスラなどEV専業メーカーを本格的に追い上げる。

 トヨタは25年にアリーンを実用化し、まずは同年に投入予定の新型SUVに搭載する計画だ。新型SUVは、EVをはじめプラグインハイブリッド車(PHV)など複数のパワートレインが選択可能な「マルチパスウェイプラットフォーム」が開発ベースだ。次いでゼロから車両設計を見直した26年の次世代EVにフルスペック版のアリーンを搭載する。車載OSの機能や車両コストなどを左右する電子PFについても、アリーンの導入に合わせ、それぞれ最適化したシステムを導入する。

 車載OSや電子PFは、これまでの先行開発から量産開発へとシフトすることになる。このため、社内外に分散する関連部署を一体化する組織改革を10月1日付で行う。先進安全や制御系のソフト関連の「クルマ開発センター」と、車外につながる機能やサービスを担当する「コネクティッドカンパニー」を一部集約して「デジタルソフト開発センター」を新設。センター長はミッドサイズビークルカンパニーの皿田明弘チーフエンジニアが就き、副センター長にはデンソーCTO(最高技術責任者)の加藤良文経営役員を招へいする。

 また、アリーンOSを手がける子会社のウーブン・バイ・トヨタCEO(最高経営責任者)にはデンソー出身でジェイクワッドダイナミクスの隈部肇社長が就き、トヨタとデンソー、ウーブンの3社連携を強化する。

 トヨタ幹部は「新組織に情報を集約し、アリーンOSを遅れることなく実装する」と話す。段階的に電子化が進んだ自動車は、エンジンやブレーキなど機能ごとにECUとソフトを搭載し、運動神経に相当するワイヤーハーネスが複雑につながり車両を制御している。車載OSの機能を最大化したり、開発費や車両コストを抑えていくには、バラバラに進化してきた各機能を整理・階層化してシステム間の連携をスムーズにする必要がある。

 車載OSで新たな商品価値を提供するSDVでは、テスラや比亜迪(BYD)などのEV専業や新興メーカーが先行した。トヨタもアリーンと次世代電子PFの実装を急ぎ、車両の競争力を一気に高めて電動車シフトで新たな攻勢をかける。