鋳造工程はエネルギーを大量消費する
「鋳造業界のカーボンニュートラルにも貢献できる」と内田信隆社長

 アイシン子会社のアイシン高丘(内田信隆社長、愛知県豊田市)は植物由来の「バイオ成型炭」を開発した。同社はエネルギーを大量消費する鋳造工程を抱える。バイオ成型炭は既存設備でカーボンニュートラル(温室効果ガス排出実質ゼロ)化が可能だ。2030年までに鋳造に用いるエネルギーをすべてバイオ成型炭へ切り替え、外販も検討していく。

 食用油や化粧品、石鹸などが採取できる「アブラヤシ」が原料で、通常は廃棄されるヤシ殻を炭化・粉砕し、独自の成型技術で硬化させ、世界で初めて石炭コークスと同等の熱量や品質を確保した。「キュポラ」と呼ばれる熔解設備で燃料の半分をバイオ成型炭に置き換えた実証も済ませた。25年度中に20億~30億円を投じて量産を始め、まずは自家消費する。置換率を段階的に高め、30年までに100%を目指す。

 同社の鋳物用石炭コークス使用量は国内市場の約2割を占めるという。大半が中国からの輸入で調達リスクがあるほか、スコープ2(エネルギー調達に関わる排出)も含む同社の二酸化炭素(CO2)排出量のうち、半分の約9万7千㌧がコークス燃焼で発生しており、鋳造工程における脱炭素化が課題だった。

 鋳造工程のカーボンニュートラル化は、キュポラを電気炉に代える手法もある。ただ、設備投資がかさむうえ、鋳造能力はキュポラの方が高く、設備効率が悪化する。また、再生可能エネルギーを用いないとライフサイクルアセスメント(LCA)ベースでカーボンニュートラルにならないという本質的な課題もある。バイオ成型炭ならこうした問題を解決できる。普及に向けては、安定調達やコストが課題となる。

 内田社長は「鋳造業界では中小企業も多く、キュポラを利用している。バイオ成型炭が実現すれば業界のカーボンニュートラルにも貢献できる」と外販も視野に入れていることを明かした。