ステランティスは、電気自動車(EV)専用プラットフォームの第1弾「STLAミディアム」を開発し、これを採用した車両の生産を2023年中に欧州で開始すると発表した。欧州乗用車市場で4割近くの販売量を占める「Cセグメント」「Dセグメント」用のプラットフォームで、SUVやセダンなど、さまざまな車種に適用可能な設計に仕上げた。航続距離は最大700キロメートル。年産規模は全世界で最大200万台とする。順次、販売エリアを広げてEV事業の基盤確立を目指す。
同社は21年7月にEV戦略を公表し、30年までに欧州新車販売では乗用車全数を、米国では乗用車およびピックアップトラックの50%をEVに転換する目標を打ち出した。このため、25年までにEVとソフトウエアに合計300億ユーロ(約4兆7千億円)の開発費を投じ、4種類のEV専用プラットフォームを実用化する計画だ。そのうち、欧州市場の量販ゾーンをカバーするSTLAミディアムの採用車種から生産を開始することにした。
同社は現在、フィアット「ティーポ」やプジョー「508」などのC/Dセグメント車26モデルを販売している。現状では傘下のブランドがそれぞれが異なるプラットフォームを活用するケースがあるが、今後はEV移行に合わせて同クラスのプラットフォームをSTLAミディアムに集約。開発・生産の効率化と、量産効果によって価格優位性を確保する。
同プラットフォームは、駆動ユニットを車体前方に配置して前輪を駆動するFFレイアウトが基本となる。後輪への駆動ユニット追加によって、4輪駆動に対応する設計とした。航続距離は大容量バッテリー搭載車が700キロメートル、標準で500キロメートルが目標。パワーユニットは、全個体電池など将来技術への対応を織り込み開発した。
車体組み立ての効率化と航続距離の延伸を狙い、高エネルギー密度の単層バッテリーパックの構造を工夫した。車両タイプにかかわらず、バッテリーパックの形状と冷却系を統一することでもコストアップを抑えた。バッテリーをフロア面全体に配置して低重心化と室内パッケージの改善を図り、操縦性、乗り心地を向上する。
ホイールベースは最大2900ミリメートルの設定で、タイヤはホイール径で最大20インチが装着可能になる。
同社は今後、「スモール」「ラージ」「フレーム」の3種類のプラットフォームも順次、実用化してEVバリエーションを拡充する。これらには共通の駆動モジュール、スマートコクピット、自動運転技術、OTA(無線通信による車載ソフトのアップデート)を採用するなどしてコストと商品魅力の両立を図り、競争力を高めていく。