米カリフォルニア州で5月に披露されたRIZONブランドのEVトラック

 三菱ふそうトラック・バスは、川崎製作所(川崎市中原区)で今夏をめどに米国向け車両の生産を再開する。同社は2020年に米国事業を終了したが、ダイムラートラックが新設した電気自動車(EV)専用ブランドのEVトラックを供給する。乗用車と比べ商用車の電動化は遅れているが、米国では一部の州政府が商用EVの普及策を打ち出している。ダイムラートラックの新ブランド車に供給し、EV事業の拡大を図る。

 ダイムラートラックが立ち上げたEV専用ブランド「RIZON(ライゾン)」の第1弾となるEVトラックを三菱ふそうが生産する。車両総重量(GVW)は約7.2~8.1トンで、米国では中型車「クラス4」同「5」に相当する。車載電池ユニットの搭載個数などが異なる3種類を展開し、最大257キロメートルを走行できる。ベース車両は「eキャンター」とみられる。7~9月の間に生産を始める。

 三菱ふそうにとっては約3年ぶりに北米に車両を供給することになる。同社は88年に販売子会社を設立するなどして北米に参入。90年代半ばには中型トラックのシェアを20%程度に高めたが、その後は思うように販売が伸びず、20年に北米での新車販売事業を終了した。

 一方、米国ではカリフォルニア州を中心にEVトラックの需要が拡大する見通しだ。乗用車のゼロエミッション車(ZEV)の販売を推進してきた同州だが、3月末には35年までに商用車の半分以上をZEVにする方針を発表。技術課題が多い商用車でZEVの販売を義務づけたのは世界で初めてだ。

 ダイムラートラックは、グループの中で中小型EVトラックの量産実績がある三菱ふそうのリソースを活用し、北米市場のEVシフトを進める。新ブランド車の販売やサービスは、カリフォルニア州に本社を置くベロシティ・ビークル・グループ社に委託する。自社ブランドではないものの、三菱ふそうのEVトラック事業には追い風となりそうだ。