藤岡高広社長

 トヨタグループの愛知製鋼は17日、特殊鋼鋼材の一部で顧客要求仕様の上限を超える長さの鋼材を出荷していたと発表した。3月上旬に納入先から指摘を受け、社内調査で判明した。性能や品質、安全性に問題はないという。今後、第三者委員会で原因究明と再発防止を進める。愛知県東海市の本社で会見した藤岡高広社長は「製造業の信頼を損ねた」と陳謝した。

 規格外の特殊鋼鋼材は、同社知多工場(愛知県東海市)で製造した丸棒鋼材(直径10~100ミリメートル)で、本数ベースでは全体の3.2%を占めるという。鋼材の長さ正寸6メートルに対して誤差の許容範囲である公差を本来「40ミリメートル以内」にするところを「60ミリメートル以内」とする社内基準で出荷していた。中村元志副社長は「性能や安全性に大きな影響はないと勝手に判断してしまった」と話す。

 基準値を超える長さの丸棒鋼材は2016年にJIS(日本産業規格)鋼を対象とした社内調査で見つかり、その時点で修正したものの、JIS規格鋼以外は社内基準で出荷し続けていた。また今回、16年に是正したことを当局に届け出していないことも判明。丸棒鋼材の出荷を停止している。

 トヨタグループでは日野自動車、豊田自動織機、ダイハツ工業で相次ぎ不正が発覚している。12日には主要グループ17社の首脳による緊急会合が開かれた。この会合に出席した藤岡社長は今回の問題を報告したという。藤岡社長は「問題があったら迅速に誠実に社長自らが話すことを痛感した」と語った。