規制緩和で車両の選択肢が広がった

 軽乗用車による「貨物軽自動車運送事業」が昨秋に認められて以降、軽の事業用ナンバー(黒ナンバー)を取得した軽乗用車の届出台数が順調に増えている。2022年10月以降、月間で約600台のペースで増え、今年2月末で3千台に迫る勢い(2855台)だ。今後も増加基調が続く見通しだが事故も増えており、国土交通省は事業者の指導に力を入れていく。

 国交省によると、黒ナンバーを取得した軽乗用車の届出台数は、22年11月末で921台、同12月末で1557台、23年1月末で2237台、同2月末で2855台と推移した。自動車局貨物課は「解禁が本格スタートした22年11月から毎月約600台の規模で増えていることからすると、堅調に推移していると言えるのではないか」と話す。

 届出台数の傾向や内訳などの詳細は把握できないが、ある販社の関係者は「現時点は新車新規よりもナンバー変更のほうが多いのではないか」と推測する。

 商機も広がる。販社の中で、軽乗用車を使用した軽貨物運送業の新規参入を支援する動きが出始めた。車両や自動車保険の販売、販売後のアフターサービスなどにつなげたい狙いだ。必要書類の作成から黒ナンバー取得まで代行する行政書士法人も増えている。

 国交省は、貨物軽自動車運送事業で軽乗用車の使用を認める通達を22年10月24日に発出、27日から施行した。これまでは、原則として最大積載量の記載のある軽商用車(軽トラック)に限り使用を認めていた。規制緩和により、従来は自家用車を貨物車に変更する場合に必要な「構造変更」の手続きと車両検査が不要になった。

 ただ、使用の本拠地(営業所の住所)を管轄する運輸支局に貨物軽自動車運送事業の経営届出などを行い、軽自動車検査協会で黒ナンバーの発行を受ける必要はある。車体側面に事業者やサービスの名称を表示する義務もある。

 政府としては、電子商取引(EC)市場の成長に伴って宅配需要が急増していることなどから、車両の「選択肢」を広げて運送事業者のコスト低減や新規参入の促進につなげたい考えだ。軽貨物の黒ナンバー車は、21年12月末時点で28万8226台。5年間で約7万台増えた。

 一方で黒ナンバーが原因による交通事故も増えている。国交省では、貨物軽自動車運送事業者に関連法令を改めて周知するとともに、過労運転や過積載の防止、点検整備による安全確保、運行管理の適正化などの指導に力を入れていく考えだ。