先端半導体は自動車産業の国際競争力も左右する

 次世代半導体の国産化を目指す「Rapidus(ラピダス)」は2月28日、工場の新設予定地として北海道千歳市を選定したと発表した。2025年に試作ライン、20年代後半に量産ラインの立ち上げを目指す。一般に先端半導体の量産には数兆円規模の投資が要る。建設需要や関連産業の集積など道内経済に幅広く恩恵が及びそうだ。

 ラピダスの小池淳義社長らが同日、北海道庁を訪問し、工場新設の意向を表明した。昨年12月に共同開発パートナーシップを結んだIBMの2ナノメートル級(1ナノメートル=10億分の1メートル)先端半導体の量産化を目指す。同社は「今後、政府による計画や予算承認を経て、具体的な準備を進める」としている。

 新工場の敷地面積は約100ヘクタール規模で、約5兆円の直接投資を見込む。ラピダスの新工場をめぐっては、鈴木直道北海道知事が2月にラピダス本社を訪問するなど誘致に力を入れていた。

 ラピダスは、2ナノ級の次世代半導体を国内で量産するため昨年11月に設立された。次世代半導体は、高度自動運転車などにも使われるため、トヨタ自動車やデンソーなどの自動車関連企業も同社に出資している。政府も700億円を助成する方針だ。

 先端半導体は次世代車には不可欠な部品だが、2ナノ級の開発では台湾積体電路製造(TSMC)や韓国サムスンなど海外勢が先行する。将来の自動車産業の国際競争力を左右する領域であり、官民を挙げて量産技術の確立を急ぐ。

 西村康稔経済産業相は同日の閣議後会見で、「日米連携の象徴的プロジェクトであり、政府としても必要な支援を行っていく」と語った。