高度な演算能力を持つ次世代半導体は次世代車にも不可欠だ

 次世代半導体の国産化に向け、トヨタ自動車やデンソーなどが新会社「Rapidus(ラピダス)」を立ち上げた。まだ実用化されていない2ナノメートル(ナノは10億分の1)級ロジック半導体の生産を念頭に、2020年代後半には製造基盤を国内に確立することを目指す。研究開発拠点も年内に立ち上げる。高い演算能力を持つ次世代マイコンは、自動運転技術やコネクテッドカーに不可欠とされている。トヨタなどでは新会社への参画を通じ、次世代車に適合した半導体の安定確保につなげる。

 2ナノ級の次世代半導体においては、巨額の財政支援を投じる台湾、韓国勢が先行しており、台湾積体電路製造(TSMC)やサムスンが25年以降に量産に入る。一方、日本で現在生産しているロジック半導体は40ナノ級にとどまっているのが現状だ。

 高度な演算能力を持つ次世代半導体は、膨大なデータの処理が必要な自動運転車に必要不可欠でもある。半導体が戦略部材となる中、次世代自動車の開発や量産で遅れを取らないため、官民で連携する。

 11日に設立が発表された新会社にはトヨタ、デンソーがそれぞれ10億円を出資した。このほか、キオクシアやソニーグループ、ソフトバンクなど計8社が出資した。今後も引き続き出資企業を募る。政府も700億円を拠出し、20年代後半に2ナノ級のロジック半導体の量産を目指す。

 研究開発拠点として「技術研究組合最先端半導体技術センター(LSTC)」も年内に設立する。国内外の企業との連携を視野に入れ、技術開発を進める。

 トヨタは新会社への出資について「新会社が開発する次世代半導体に車載ニーズを織り込んでいくため」(広報部)と説明した。新会社で製造する半導体は、人工知能(AI)やスーパーコンピューターなど他領域での活用も見込まれている。開発、製造の初期段階から関わっていくことで、次世代車に必要な仕様を満たす半導体の確保につなげる。