2023年の自動車整備業界は、電子制御装置整備の対応に向けた取り組みが活発となる一年になりそうだ。4月に特定整備制度の経過措置の期限が1年を切り、認証未取得の事業者による動きが慌ただしくなる。認証取得件数は昨年11月末で約4万件だった。業界内では取得率が全体の7~9割となる見通しもあり、駆け込み申請の発生が予想される。期限が迫ると取得までに時間を要する可能性もあることから、今年こそは早め早めの対応が求められる。

 電子制御装置整備への対応で認証取得は単なるスタートであり、技術習得や設備投資を進める必要もある。電子制御装置整備と一口で言っても一筋縄ではいかないのが実情だ。汎用整備機器は機器メーカーによって自動車メーカーへの対応に強弱がある。すべてのメーカーに対応できる機器をそろえるには多くの資金が必要となるため、技術や知識だけでは対応できない難しさもある。

 そうした中で、動きが活発になると想定されるのが事業者同士の「地域連携」だ。特定整備制度の施行以降に盛んになってきた動きで、同じエリア同士の事業者が互いに不足する部分を補い合う枠組みだ。従来通り、車検などは競争領域として各事業者が競い合うが、電子制御装置整備など整備技術高度化では協調してできるところに任せていく。すでに業界団体や民間企業などが垣根を越えて連携を図っており、今年以降は連携の輪がさらに広がるとみられる。

 地域連携では電子制御装置整備を取得しないと決めた整備事業者にとっても有効だ。こうした輪が広がることで、設備投資を進めている整備事業者への入庫が増して投資負担も軽減できるようになる。事業者全体で共創を実践していくことができれば、業界の未来にはまだまだ明るい兆しがある。

 整備業界の法制度は20年度の特定整備制度の施行以降、目まぐるしく変化している。21年10月には点検基準の改正で車載式故障診断装置(OBD)を活用した点検が始まり、24年10月には自動車検査(車検)でのOBD検査が控えている。他方、車検関連業務では自動車検査証(車検証)の電子化が4日に始まるなど整備事業者は否応なしに対応を迫られている。

 整備業界には電子制御装置整備だけではなく、電気自動車(EV)や人材確保、デジタル化など対応すべき課題はまだまだある。同時並行で行うには難しさがあるものの、車社会の安心と安全のために当面の間は辛抱強さが求められそうだ。