特別調査委員会の榊原委員長

 日野自動車は2日、エンジン認証に関する不正を過去約20年にわたって行っていたことを発表した。2016年に国土交通省から排出ガス・燃費試験を適切に行っているか報告を求められた際、虚偽報告していた。不正対象車種は09年に導入されたポスト新長期規制以降だけで56万6千台に上る。出荷停止するエンジンの種類は産業用や海外向け出荷を含めて7種類になる。日野は今後、健全なガバナンス体制確立について検討し、3カ月をめどに取りまとめる。

 日野はこれまで16年9月から不正を行っていたと公表していたが、外部有識者による特別調査委員会(榊原一夫委員長=元大阪高等検察庁検事長)の調査の結果、少なくとも03年から排ガス測定に関する不正を行っていたことが発覚した。

 具体的には03年10月に導入された「平成15年排出ガス規制(新短期規制)」以降に日野が開始した劣化耐久試験で同社パワートレーン実験部がデータ改ざんなどの不正を行っていた。一方、燃費測定については06年4月に燃料流量校正値を燃費に有利になるように操作するなどの不正を行い、その後のエンジン開発でも同様の行為を継続した。国交省は16年4月に三菱自動車の燃費不正が発覚したことに合わせ、自動車メーカー各社に認証取得時の試験における不適切事案をヒアリングしたが、日野は虚偽報告していた。

 いずれの不正もパワートレーン実験部で発生したが、榊原委員長は「当委員会はこれをパワートレーン実験部における局所的な問題に矮小化することは、問題の本質を見誤ることにつながる」と指摘。問題の真因に(1)みんなでクルマをつくっていないこと(2)世の中の変化に取り残されていること(3)業務をマネジメントする仕組みが軽視されていたこと―を挙げた。

 日野の小木曽聡社長は「05年あたりから規模や量を重視してきた結果、仕向け地などの拡大推進で現場に余裕がなくなり、品質やコンプライアンスが後回しになった。前年踏襲を良しとする風土もあった。ある特定の部署で起こったことは事実だが、この部署を不正に追い込んだことは全社的な問題だ」と述べ、再発防止策を徹底する考えを示した。日野自動車は従来の再発防止策の継続や強化に取り組むとともに、全社横断での品質マネジメント体質や企業体質の改善、管理監督機能の強化に向けた体制を検討する。

(2022/8/2修正)