小型で静粛なEVを使い、住宅街などでの実用性を確かめる

 小型商用電気自動車(EV)の開発・販売を手掛けるファブレス企業のHWエレクトロ(蕭偉城社長、東京都江東区)は、生花店のラストワンマイル配送用車両に同社の商用EV「エレモ」を使用する実証実験を開始した。20日から1カ月の実施期間で、配達後の充電残量や走行距離、運行履歴などのデータを集め、商用EVの社会実装に向けた実用性を探る。

 一般社団法人JFTD花キューピット(澤田將信会長)の加盟店と協力し、埼玉県川口市の生花店でEVを導入する。ピックアップタイプのエレモ1台に架装を施し、全高を確保するなど生花の積載に適した幌付きの荷室を搭載した。店舗から客先へのラストワンマイル配送で使用し、夜間は店舗の屋外用コンセントで普通充電を行う。小型で静粛な車両により、住宅街などでの運行との親和性を見込むとともに、地域や時間が限定された用途でのEVの活用可能性を探る。

 国内では、配送事業者などを中心に商用EVへの需要が高まっている。特に足元では、荷主企業が自社商品の配送で脱炭素化を望む動きもあり、物流事業者は対応を迫られている状況だ。HWエレクトロの担当者は「実際に配送で使用することで、事業用車としてのモデルケースになれば」としている。JFTD花キューピットとの取り組みによって、商用EVの市場で存在感を高めたい考えだ。

 足元では、独自EVの開発を進めるベンチャー企業が増えている。ASF(飯塚裕恭社長、東京都港区)は、佐川急便が使用する軽商用EVの開発を進めるほか、フォロフライ(小間裕康CEO、京都市左京区)もSBSホールディングスにバンタイプの独自EVを納めている。こうした中、HWエレクトロでは「2022年度のクリーンエネルギー自動車(CEV)補助金の補助対象にもなり、EV導入を検討する事業者の有力な選択肢となりつつある」(担当者)とし、中小規模事業者の需要を取り込んでいく狙いだ。

 ただ、運送業界の9割を占めるとも言われる中小企業の場合、EV導入へのハードルは決して低くない。JFTD花キューピットの担当者も「今後は全国の加盟店でも環境対応が必要になると想定される」としつつも、「EV導入への意識や体力は事業者によってさまざま。モデルケースを示すことが重要になる」と導入意欲の醸成はこれからとの認識だ。

 20日には日産自動車と三菱自動車が新型の軽乗用EVを発表するなど、EVへの関心は日増しに高まっている。一方、HWエレクトロが主戦場とする小型、軽タイプの大手メーカー製商用EVは、今秋にも販売を再開する三菱自「ミニキャブ・ミーブ」のみ。ホンダが24年までに軽商用EVを発売する計画だが、ラインアップはそろっていない。JFTD花キューピットの担当者は「実験を通じて、(加盟店に)EVへの関心を高めてもらえれば」とし、新興ファブレスメーカーと協業する実証実験の成果に期待感を高めている。