市販VS純正
自動車メーカーでは、コネクテッド機能を装備する車種専用カーナビでユーザー獲得を図る動きが本格化した。トヨタ自動車は新型「ノア」「ヴォクシー」に決済アプリ「トヨタウォレット」対応の通信型カーナビを設定。純正カーナビならではのメリットを高める施策に余念がない。
これに対し、市販カーナビはさまざまなアイデア、工夫を凝らし純正品にはない魅力づくりを進めている。
市販ナビのトレンドの一つは大画面化。センターコンソールなどに画面を浮かせるように取り付けるフローティング構造の開発で10、11㌅の大型ディスプレー装着を可能にした。また、市販車載機器の愛好家は同一ブランドの製品でそろえる傾向が強いため、自社製品間の連携を広げて顧客囲い込みを狙う動きもある。
DAとの戦い
市販カーナビ各社が最大の〝脅威〟とするのは、自動車メーカーのディスプレーオーディオ(DA)搭載拡大という点で一致している。電子情報技術産業協会(JEITA、綱川智会長)が公表する民生用電子機器国内出荷統計を見ると、カーナビゲーションシステムの出荷推移は2018年の614万4千台をピークに減少。21年には半導体不足による生産減少の影響もあり500万台弱に落ち込んだ。出荷減は輸入車でDAの新車装着が進んだことが大きいとの見方が根強い。
DAは、スマホアプリをクルマの画面で共有できることが最大のメリット。DAにつなげばネット地図の経路案内や、動画視聴アプリなどスマホで親しんだアプリを使って、車内でコンテンツを楽しめる。DAはナビ機能を省きコストを下げられるため、国産車でも新車採用が進んでいる。DAの先には、自動運転や統合コクピットなど市販品装着の余地をなくしかねない新技術が控えている。
しかし、市販カーナビはいまだに年間500万台近くの市場規模を保ち、カー用品店でも販売の主力となっている製品だ。コンサバティブな技術進化を基に商品開発を進める純正品に対し、先進技術の迅速な導入や「かっこいい」「おもしろい」などのアイデアを具体化することが市販品に求められることは今も昔も変わりない。そのニーズに応えるものづくりの心意気こそが、カーナビ各社の持続的な成長の糧になる。