自動車メーカー各社は、2022年も世界的な半導体不足や新型コロナウイルス感染拡大に伴う部品調達難の影響を受けそうだ。昨年後半はコロナ禍の影響がいったん落ち着き、国内生産の正常化への期待が膨らんだが、部品供給不足の問題は解消されていない。国内物流のひっ迫という新たな問題も浮上し、一部メーカーでは減産や工場の稼働停止を余儀なくされるなど、先行きには依然として不透明感が漂う。ただ、こうした課題は自動車メーカーがサプライチェーンの強靭化を検討する契機にもなった。メーカー各社は21年度の生産計画達成に向けて挽回生産を進めており、予断を許さない状況の中で改めてサプライチェーンの維持・強化が重要となっている。部品サプライヤーとともに新たなリスクにも迅速かつ的確に対応することがますます求められている。

予断を許さぬ先行き

 21年の乗用車メーカー8社の世界生産台数は、半導体不足を背景とした生産調整や新型コロナウイルスの感染再拡大などで1月は前年同月比でマイナスとなった。だが、2月以降は、コロナ禍によるロックダウン(都市封鎖)などの影響で大幅に落ち込んだ前年の反動が表れ、6月までプラスが続いた。

 1~6月の世界生産は前年同期比30%増を記録したが、コロナ禍前の19年実績との比較では約3割少ない水準の月もあるなど本格回復には遠く、半導体不足や東南アジアからの部品調達難の影響の根深さが浮き彫りになった。

 7月からは状況が一変する。8社中3社が2桁増を果たしたものの、4社は2桁減を喫するなどメーカー間で明暗が分かれ、8社合計は小幅ながらもマイナスに転じた。世界的に新車需要は回復傾向を示す中、生産活動の停滞により供給が追い付かない需給ギャップがこの頃から目立つようになった。

 8月以降は半導体不足や部品調達難の影響が鮮明となる。世界生産は10月まで8社中7社が前年割れとなり、半減まで落ち込むメーカーもあった。この中で三菱自動車は半導体不足の影響が軽微だったこともあり、4月以降は前年超えが続いた。

 21年4~9月期決算発表では「半導体不足や東南アジアからの部品調達停滞は改善に向かっている」とポジティブな見方を示すメーカーも多かったが、先行き不透明感も拭えず、通期の業績見通しでは非公表のスバルを除く多くのメーカーが販売台数(小売り)を大幅に下方修正した。

 下期に入っても、依然半導体不足や東南アジア製部品の調達難の影響が残る中、自動車メーカーは通期の生産計画達成に向けて挽回生産に乗り出した。しかし、新たな問題にも直面したことで予定していた計画を見直している。

 トヨタ自動車は12月に全工場で通常稼働に戻す計画だったが、当初計画に対し12月は約2万2千台、1月も約2万台の減産を予定するなど稼働調整を余儀なくされた。

 従来の半導体不足やコロナ禍に伴う東南アジアからの部品調達遅延という理由に加え、国内の物流ひっ迫という新たな問題が浮上している。コロナ禍以降は船便の遅延やコスト上昇などを背景に、部品の種類や必要度に応じて物流を船便から航空便に切り替えるケースが増えた。だが、主に発着数の多い成田空港で部品の通関にかかる時間が長期化し、部品が空港から出るタイミングを把握にしくいため、その先のトラック輸送も確定しにくい状況になったという。トヨタでは通関の混乱がサプライチェーン全体に影響を及ぼす状況が当面は続くと予想する。ただ、トヨタでは減産はするものの生産台数は高水準を維持しており、21年度の生産台数見通し(約900万台)は変更しない。

 ホンダも鈴鹿製作所の12月の生産台数が当初計画に対し約1割減少した。12月から国内生産は正常化する見通しだったが、半導体不足やコロナ禍に伴う部品入荷や物流の遅延が影響した。他の国内工場の生産は計画通りで、鈴鹿製作所も1月に通常稼働に戻る見通しだ。