参考展示したステアリングホイール

 京セラは8日、同社の触覚伝達技術とプラスチック製品に電子回路を組み込む成形技術を組み合わせた新技術「ハプティビティi」を開発したと発表した。成形と同時に電子部品などを組み込むことで部品や工数の削減を図る。今後、同社は滋賀野洲工場(滋賀県野洲市)に2022年に新技術を用いた生産ラインを構築し、23年からの量産を目指す。

 触覚伝達には同社の「ハプティビティ」を採用した。力を加えると電圧が発生するなどの特性を持つ圧電素子を金属板バネと接着した圧電アクチュエーターが指先へ振動により圧覚を伝達する。指で押してから離すまでは圧電素子を独自のコントローラーが制御することで機械式ボタンと同等の触覚を実現する。

 型はフィンランドで電子部品などの生産を手がけるタクトテックの「IMSE」の技術で成形する。3D射出成形のため外観デザインなどは新しい金型を用意せずに変更可能だ。部品数が減ることで軽量化などにつなげ電動化にも対応する。

 従来の機械式ボタンは触覚が決まっていたが、新技術は京セラのハプティビティの技術によって複数の触覚パターンを再現する。操作者の好みに合わせてカスタマイズもできる。また、動作温度はマイナス40度から85度で過酷な条件下で利用が想定される自動車向けにも展開可能だ。

 京セラは、新技術を産業機器への採用を皮切りに自動車をはじめ医療分野など幅広い業界へ提案する。同社はハプティクス技術市場を30年には約6千億円に達すると予測。さらに新技術の参入可能な市場を約300億円と見積もり、シェア獲得を目指す。