日産が2022年に米国に投入するアリア

 日本の自動車メーカーが米国で電気自動車(EV)の普及を推進する動きを強めている。ホンダは2030年にEVの販売台数を50万台に引き上げる目標を新たに表明し、日産自動車やトヨタ自動車も米国のEV販売目標を設定してEVの拡大を進める。この一方、足元では全米自動車労働組合(UAW)の組合員が働く企業が生産、販売するEVの購入者に税額控除を行う案を民主党が示している。UAWに加盟していない日本メーカーにとって思わぬ逆風が吹き始めた。

 米バイデン政権は8月、30年に乗用車と小型トラックの新車販売に占めるEVとプラグインハイブリッド車(PHV)の販売比率を50%にする目標を掲げた。これを受けてゼネラル・モーターズ(GM)、フォード・モーター、ステランティスの国内大手3社は補助金や充電インフラの整備を要請するとともに、30年にゼロエミッション車(ZEV)とPHVの比率を4~5割に引き上げる方針を共同発表した。

 日本の自動車メーカーでは、米国政府の方針に合わせて日産が8月、30年までにEVの販売台数比率を40%以上に引き上げる目標を発表。北米での20年度実績は0・9%だったが、22年に発売する「アリア」を皮切りに商品投入を積極化し、目標の達成を目指す。トヨタは22年にもEVを米国に投入し、北米でのZEV比率を15%にする。PHVの展開にも注力し、電動車全体(ハイブリッド車含む)の比率は同年に7割に引き上げる。

 ホンダは4月にZEVの比率を30年に40%にする目標を掲げたが、新たにEVに特化した台数目標を打ち出した。まずGMのプラットフォームを活用した量産EV「プロローグ」を24年にカリフォルニア、テキサス、フロリダで発売し、初年度に7万台の販売を見込む。その後順次、販売地域を拡大するとともに、20年代後半には自社開発のプラットフォームを採用したEVも発売し、30年にはEVの年間販売台数を50万台に引き上げる。

 バイデン政権の方針に呼応し、EVシフトを加速する日本の自動車メーカーだが、米民主党は9月10日、UAWに加盟する組合員が生産したEVの購入者を対象に追加で4500㌦(約49万円)の所得税を控除する制度の導入を下院歳入委員会に提案した。導入されれば、労組に加盟していない自動車メーカーのEVの競争力は相対的に低下することになる。

 ホンダは30年に向けたEVの販売目標を「州や連邦政府のインセンティブを公平に利用できることが達成の条件になる」としているほか、トヨタやテスラなども同提案に反対意思を表明した。政策の動向次第で自動車メーカーの勢力図が変わる可能性がある。