先行情報を公開した「NSXタイプS」

 ホンダのスーパースポ―ツモデル「NSX」が2022年末に幕を閉じることになった。ホンダは、「チャレンジ・スピリットの象徴」としてきたNSXの生産を終了することで、カーボンニュートラル化に向けて電気自動車(EV)などへのシフトに突き進むことを社内外に鮮明に打ち出す。代わって従来の延長線上にないホンダ車を象徴する電動車時代の新しいスーパースポーツカーを開発する方針だ。米国のNSX専用工場は少量モデルの生産拠点として活用していく。

 ホンダは3日、8月に発表する予定の現行2代目NSXに設定する「タイプS」が最後のモデルになると発表、22年12月でNSXの生産を終了することを決めた。

 NSXは、高い動力性能を持つ「人間中心のスーパースポーツ」をコンセプトに開発したホンダのフラッグシップモデルで、独創的なエンジンで自動車業界に存在感を示してきたホンダ車を代表するモデルだ。現行の2代目は、3つのモーターを搭載するハイブリッドシステム「スポーツ・ハイブリッドSH―AWD」を採用、電動車時代のスーパースポーツモデルとして16年に市場投入した。

 ホンダは今春、40年に販売するモデルをEVと燃料電池車(FCV)のみとし、内燃機関から撤退することを決めた。この方針に沿うように今回、ハイブリッド車(HV)ながら内燃機関を搭載しているホンダ車の最高峰モデルの生産終了を決めた。三部敏宏社長は「得意のエンジンビジネスから変えるのは難しい。変化させるため明確な目標を発信していく」方針を掲げる。

 NSXの開発で培った人材や技術を生かして電動化時代に求められるスーパースポーツカーを開発し、スポーツカーからは撤退しない方針。

 NSXの初代モデルのグローバルでの累計販売台数は約1万8千台だったが、2代目は2558台にとどまっており、販売が低迷していることも生産終了を決めた理由だ。

 ホンダは2代目NSXを生産するため、米国オハイオ州に専用生産拠点「パフォーマンス・マニュファクチャリング・センター」(PMC)を設けた。熟練工による手作業での職人の技と、先進的な生産設備を融合した工場だ。NSXの生産終了後、PMCは少量モデルの生産拠点として活用する。

 ホンダは初代NSXやHVの初代「インサイト」などの少量モデルを生産していた高根沢工場(栃木県高根沢町)を04年に閉鎖、機能を鈴鹿製作所(三重県鈴鹿市)に移管した。PMCも今後、少量の高性能電気スポーツモデルの生産拠点などに生かすとみられる。

 モータースポーツ活動では、NSXでスーパーGT500/300クラスにワークス参戦しているが、23年シーズンまでは現行モデルでの参戦を継続する。

 一方、ホンダはNSXの最終モデルとなるタイプSの先行情報を公開した。パフォーマンス向上とデザインを変更、限定カラーとなる新色「マットカラー」を設定するなどして「所有する喜び」を追求するとしている。世界で350台、このうち国内が30台限定で販売する。最終モデルとして注文が殺到する可能性があるため、販売方法は今後検討する。