東レは、炭素繊維強化プラスチック(CFRP)の高熱伝導化技術を開発したと発表した。CFRPに多孔質CFRP支持体とグラファイトシートで構成した熱伝導層を積層し、軽量化と高熱伝導化を両立する。金属と同等の熱伝導率のため、電気自動車(EV)のバッテリーなどの部品や次世代モビリティ、電子機器向けなどへの用途展開を狙う。

 CFRPは熱伝導性が弱く、熱伝導性を高めるためにグラファイトシートを表面や内部に配置して放熱性を改善する手法が使われている。ただ、グラファイトシートは損傷しやすい課題がある。表層にグラファイトシートを貼付する際に接着剤が必要となる上、破断対策として飛散防止フィルムなどを用いるため重量増加の課題があった。また、内部に積層する場合もグラファイトシートの損傷によって物性が低下するなどの問題点があった。

 今回の開発技術では、熱伝導層のCFRP多孔質支持体がグラファイトシートを保護しながら複合材料として機能するため、グラファイトシートの脆さを補い、熱伝導性を備える。また、グラファイトシートや多孔質CFRP支持体の厚みを調整でき、CFRPの冷却効率や熱拡散経路などのヒートマネジメントを自在に設計できる。

 EV向けではバッテリー充電時の放熱用途などを見込む。同技術を「数年後には製品化したい」(吉岡健一理事)考えだ。