大阪府のチャレンジ

 このほか東京大学発のテトラ・アビエーション(中井佑社長、東京都文京区)が1人乗り電動垂直離着陸機(eVTOL)の開発を進めている。昨年2月にアメリカで行われたeVTOLの開発コンペティションで、賞金10万ドル(約1千万円)を獲得。同年8月には宇宙航空研究開発機構(JAXA)との共同研究を開始した。

 一方、スカイドライブなどに出資するNECは、19年から空飛ぶ車の移動環境に必要な交通整理や機体・地上間の通信などを支える管理基盤の構築を本格化している。取り組みの第1弾として、同年8月に空飛ぶ車での機体管理の機能や飛行特性を把握するために試作機を開発。NEC我孫子事業場(千葉県我孫子市)に新設した実験場で浮上実験を実施して成功させている。

 NECはスタートアップの支援に加え、同社が独自に航空・宇宙分野の航空管制システム・衛星運用システムなどで培ってきた管制技術や無線通信技術、無人航空機の飛行制御技術の開発実績と、インフラ分野でのサイバーセキュリティー対策に関する知見で、空飛ぶ車のための新たな移動環境の実現に向けた検討を進めている。

 官民連携による「空の移動革命」を目指した取り組みも進む。20年11月17日には大阪府や企業などが参画する「空の移動革命社会実装大阪ラウンドテーブル」が発足した。自治体と企業、行政が連携して次世代の移動・輸送手段である空飛ぶ車の利活用に関して議論する予定だ。ルールや運用方法などを具体的に固め、実現に向けた道筋を国に提案することで、25年ごろの大阪周辺でのサービス実現につなげていく。 

 発足した同日時点で計41の企業・団体が集まった。経済産業省や国土交通省、25年日本国際博覧会協会など5者もオブザーバーとして議論に加わる。自動車産業からはスバルが参画している。

 ラウンドテーブルでは、府内での発着場所や高度の設定など具体的な運用に関する議論を展開する。23年をめどに空飛ぶ車を実装する国のロードマップを踏まえ、国がスムーズに法整備などを進めるための素材を提供することで、大阪での空飛ぶ車の実現を促す構えだ。

 空飛ぶ車の実現に当たっては、飛行時間と軽量化の両立など技術的な課題も少なくない。それでも、PwCコンサルティングが20年12月16日にまとめた調査レポート「空飛ぶクルマの産業形成に向けて」によると、空飛ぶ車の国内市場規模は40年には2.5兆円に達すると試算した。

 その上で、国内企業が地域ニーズに即して継続的なビジネスとして展開できるエコシステムを構築し、空飛ぶクルマに対する社会受容性を醸成していくためには、「機体やインフラ、航空管制などをシステムとして包括的取りまとめ、社会実装を担うシステムインテグレ-ションの司令塔(インテグレーター)が生まれることが必要になる」と指摘している。

 技術革新である空飛ぶ車を活用して、交通や観光、物流、生活など幅広い分野で地域課題の解決につなげるー。21年以降、地域の生活の質の維持、向上を図るとともに、新ビジネスの創出などの実現を目指す動きが活発化することになりそうだ。