トヨタ自動車は、自動運転の電気自動車(EV)「e―パレット」を2020年代前半に国内で商用化する。来年7月に延期となった東京オリンピック・パラリンピックを皮切りに、実証都市「ウーブンシティ」にも導入し、その後、複数の地域で運用を開始する。トヨタ生産方式(TPS)を生かしたMaaS(サービスとしてのモビリティ)向け運行管理システムも開発し、ものづくりで培った「異常の見える化」や運用スタッフの「多能工化」を実現した。同運行管理システムは自動運転EVと共に提供し、MaaSの実用化を後押しする。
トヨタは22日、TPS思想に基づいた自動運転EV向けの運行管理システムを発表した。コネクティッドカンパニーの山本圭司プレジデントは、新開発した運行管理システムについて「東京オリ・パラ向けに開発したが、このような仕組みは一般の交通環境への適応が可能だ」と実用化に向けた自信を示した。
同システムは、コントロールセンターで複数車両の走行を同時に制御する「オートノマス・モビリティ・マネジメント・システム(AMMS)」と、主にスタッフの作業状況を管理する「e―パレット・タスク・アサインメント・プラットフォーム(e―TAP)」で構成する。
AMMSでは、メイン画面で車両の位置情報や運行ピッチ間隔などのサービス状態をはじめ、充電中や異常発生などの状況を一目で把握できる。また、利用者が増えた場合に増車を指示するなど運行計画も簡単に変更できる。スタッフのタスク管理を行うe―TAPでは、搭乗員、移動員、保守員、停留所係員の作業状況を管理し、負荷の偏りを見える化することで要員の役割変更を指示することもできる。ウェアラブル端末でスタッフの体調管理も行う。全体を見える化することで、待ち時間の短縮や混雑を緩和し、さらに限られたスタッフでのオペレーションを可能とすることでより効率的なサービスの運用を実現する。
コロナ禍で生活様式が変化し、移動ニーズが変化、多様化する中で、e―パレットを活用した新たなモビリティサービスも模索する。コネクティッドカンパニーMaaS事業部MaaS―Zグループの牟田隆宏主査は「コロナでeコマースは伸びている」と、自動運転による非接触型の宅配サービスを検討する。また、プライベート空間で利用できる移動店舗など、e―パレットの室内空間を利用した新サービスの実現に向けパートナー企業との協業も検討している。