新型ミライ

 トヨタ自動車は9日、燃料電池車(FCV)「MIRAI(ミライ)」を全面改良して発売した。プラットフォームや駆動方式、FC関連部品を刷新して走行性能を高め、車格も向上させた。日本を皮切りに北米や欧州で発売する。技術開発を統括する前田昌彦執行役員は「新型ミライが水素社会の本格普及に向けた出発点になるよう、尽力していく」と語った。

 トヨタは2014年12月に初代ミライを発売し、今年9月までに約1万1000台(うち国内は約3700台)を販売した。初代に次いで2代目の開発も指揮した田中義昭チーフエンジニア(CE)は「初代で最初の布石を打てたが、皆さんに満足していただける車かというと、必ずしもその限りではなかった。(新型車は)FCVである以前に感性や走り、スタイルを際立たせ『たまたま欲しいと思ったクルマがFCVだった』と思われるクルマを目指した」と語った。

 新型車の販売目標は非公表だが、これまでに約500台を事前受注した。他社にも供給するFCスタックの年間生産能力は従来の3000基から一気に3万基へと増やす。

 2代目は、TNGA(トヨタ・ニュー・グローバル・アーキテクチャー)に基づくFR(後輪駆動)高級車向けの「GA-L」プラットフォームを採用。FCスタックを車体前部に、駆動モーターと電池を後部に配置するなどして重量配分を最適化した。中核部品のFCスタックは小型・軽量化した上で最高出力を128キロワット(旧型は114キロワット)に高め、量産もしやすくした。水素タンクは2本から3本に増やし、初代オーナーからの要望が一番多かったという航続距離を初代から3割延ばし、約850キロメートルとした。

 予防安全「トヨタ・セーフティ・センス」や運転支援「トヨタ・チームメイト(アドバンスト・ドライブは21年に追加予定)」など最新装備も搭載。発電用に取り込む空気中の粒子状物質をフィルターで除去する機能も設けた。田中CEは「走れば走るほど空気をきれいにする。ゼロエミッションだけでなく、マイナスエミッションという新たな価値を提供する」と説明した。

 車体価格は初代(約737万円)からほぼ据え置きの710万~805万円(消費税込み)。国の「クリーンエネルギー自動車補助金」が約117万円出る。水素タンクは下山工場(愛知県みよし市)と豊田合成のいなべ工場(三重県いなべ市)、FCスタックはトヨタの本社工場(愛知県豊田市)、車両の組み立ては元町工場(愛知県豊田市)が受け持つ。