自由な移動提供で地域を活性化(中央は日産の星野朝子副社長)

 日産自動車や京浜急行電鉄などは1日、横浜市金沢区富岡エリアで乗り合い型移送サービスの実証実験を11日に開始すると発表した。2018年から京急電鉄や横浜国立大学などが行っているプロジェクトに日産が本格的に参画し、車両提供や移動サービスに使う専用アプリの開発などを通じて、利用者のニーズに合わせてサービス品質を改善する。高齢化やアクセス面などさまざまな課題を抱える同地域に対して、自由な移動を提供することで地域の活性化を狙う。

 日産は、京急電鉄、横浜国立大学、横浜市による移動実証のプロジェクトに、車両提供を中心に携わってきた。今年度からは同プロジェクトに本格的に加わり、車両面でのサポートだけでなく、運行システムを含めたソリューションを提供する。日産はこれまでカーシェアリングサービス「日産eシェアモビ」や自動運転技術を使った配車サービスに取り組んできたが、乗り合い型の移動サービスは初めてという。

 実証エリアの富岡地域は急こう配な坂道が多く、バス停や鉄道駅へのアクセスが容易でない地域もあり、高齢化も進む。地域の移動課題に対してこれまで小型電動カートや乗用車を使い、定時定路線運行やオンデマンド運行の実証が行われてきた。

 3年目を迎えた今年度の実証は、無償期間と有償期間の2段階で行う。無償サービス期間は11日~12月11日のうち45日間、有償での実証は21年1月中旬以降の約50日間を予定。初年度の10日間に比べて大幅に期間を延ばした。車両は日産「セレナeパワー」「NV350キャラバン」とグリーンスローモビリティを用意し、車内はセパレーターを設置するなど感染症対策も施す。京急タクシーグループの乗務員がドライバーとして人々を目的地まで送り届ける。

 過去の実証の利用者の声を反映し、今回決まった路線を定期運行するサービスは従来の2ルートから4ルートに拡大し、すべて京急富岡駅に接続する。また手挙げにより路線上のどこでも乗降可能とした。乗り場と行き先を自由に決めてアプリなどで予約して乗るフリーエリア運行では、専用アプリの場合、最短当日の15分前まで配車予約できる。乗降ポイントは京急富岡駅や能見台駅など約70カ所を設定した。

 1日にニッサンパビリオン(横浜市西区)で開いた会見で、日産の星野朝子執行役副社長は「モビリティサービスの事業化までを見据え、どうすれば地域の活性化に役立つかを見極めるすごくいいチャンス」、京急電鉄の原田一之社長は「いろいろな移動手段の組み合わせの中で街の人が楽しく移動できると感じられることが街の活性化につながる」と実証プロジェクトへの期待を語った。