オンライン会見する豊田会長

 日本自動車工業会(自工会、豊田章男会長)は24日、10月1日付で大幅な組織改革を行うと発表した。理事の人数は現状の36人から17人まで削減、委員会や部会の数もほぼ半減する。次世代モビリティなど業界を挙げて取り組むべき事業を集中的に推進できる体制を構築する。副会長には新たに大型車と二輪車メーカーのトップが加わり、MaaS(サービスとしてのモビリティ)など新領域への対応も加速する。自動車業界が日本の戦略産業として世界で競争力を維持するために政策提案を積極化し、メーカーの垣根を越えて産業全体の底上げを図る戦略的組織へと〝モデルチェンジ〟する。

 組織改革は、自動車工業会と日本小型自動車工業会が合併し自工会が発足した1967年以来の大がかりなものとなる。旗振り役は会長就任2回目、かつ5月に2期目に突入した豊田会長だ。24日に開いたオンライン会見で豊田会長は「自工会は硬直化した組織になっていた。このままでは自動車産業の未来を担う軸としての役割を果たすのは難しい」と、抜本的な組織の見直しに踏み込んだ。

 自工会の全事業は約300にのぼり、これまで12の委員会と55の部会で推進してきた。今回、各事業を棚卸しした上で組織の役割も再定義し、委員会は5、部会は30に集約・スリム化したことで、CASE(コネクテッド、自動運転、シェアリング、電動化)やMaaSなど取り組むべき重点テーマを深掘りできる体制とした。

 理事会直下組織とした各委員会は「次世代モビリティ」「安全技術・政策」「環境技術・政策」「サプライチェーン」と、それぞれに役割を明確化。「総合政策」は各委員会に横串しを通して横断的に政策渉外や広報啓発活動などを展開する。これに加え二輪、軽、大型、モーターショーの4委員会を設置。次世代モビリティのあり方が模索される中で、各車種別委員会では課題を抽出し取り組みを進めていく。

 各メーカーから2名以上選出していた理事も大幅に削減し、意思決定をスピーディに行える体制へと変更した。豊田会長と神子柴寿昭副会長、永塚誠一副会長・専務理事は続投し、車種別委員会から新たにいすゞ自動車の片山正則社長、ヤマハ発動機の日髙祥博社長が副会長に就く。

 豊田会長は「自動車産業の未来は回答がない。〝正解〟に持っていくためにはスピードと密なコミュニケーションが必要だ」と強調する。海外に目を向けると、電動車ではテスラなど新興メーカーの台頭や欧州メーカーの攻勢、中国メーカーの東南アジア進出など、グローバルで構造変化が起きている。また、少子高齢化による母国市場の縮小が避けられない中で、新生自工会では自動車産業の競争力維持に向けた政策提案も積極的に行っていく。