作業者のヘッドセットでは、タブレット画面のように実車とワイヤーハーネス配線が重なって見える

 トヨタ自動車は、複合現実(MR)と呼ばれる技術を使った新たな点検整備の支援機器を開発した。市販のヘッドセットに配線図などを実車に重ねて映し出したり、修理マニュアルを手元で操作したりできる。人材育成や商品説明などにも活用する。10月から1年間、一部の販売会社で使い勝手を検証し、改良を加えた上で本格導入を目指す。

 米マイクロソフト(MS)社が発売したホログラフィックコンピューター「ホロレンズ2」を用いる。車両の3次元CAD(コンピューター支援設計)データや新型車解説書、整備要領書、配線図などの情報を取り込んでおり、配線図や艤装図を実車と重ね合わせて見ることができる。また、部品やコネクターに触れると関連情報を表示したり、配線図や修理手順など複数の画面を使い分けることもできる。操作は指先や視線、音声で行い、両手で作業できることも特徴だ。MS社と連携しつつ、ソフトウエアの一部はトヨタが独自開発した。

 10月からまず、効果検証や改善のため「GRヤリス」「C―HR」「プリウス」のデータを収納して全国のGRガレージ(57店舗)に無償で1台ずつ貸与する。MS社のサービスも併用し、メカニックの研修やリモート診断などにも役立ててもらう。またGRヤリスに限り、空力性能やブレーキ冷却性、前後のトルク配分状態などをホログラフィック動画で車両と重ねて説明する機能もつけた。顧客にも使用してもらい、新たなサービスに役立てられないか探るのが狙いだ。

 MS社のホロレンズは、コンピューターグラフィックスなどの仮想世界と現実世界を融合させたMRと呼ばれる技術の一種。デジタル情報と実物を重ねて表示し、ソフトも操作できることが特徴だ。医療や建設業界などで使われ始めているが、自動車の点検整備に用いるのはトヨタが初めてと見られる。

 トヨタは、車両の構造データや人工知能(AI)技術を基に、損傷の度合いや修理方法、交換部品などを割り出す見積もりソフトも販社に展開する計画。今後も最新のデジタル技術を駆使し、アフターサービスの効率化や省人化に取り組む考えだ。