移動式発電・給電システム「ムービングe」として自治体などに提供する

 トヨタ自動車とホンダが災害時の被災地支援に向けてタッグを組む。両社は31日、トヨタの燃料電池(FC)バスにホンダの可搬型給電器やバッテリーを積載し、避難所や停電中の家屋などに電力を供給する実証実験を1日に開始すると発表した。FCバスで被災地付近まで移動し、ホンダの給電器や2種類のバッテリーで用途に応じて電力を供給する。利用後のバッテリーはFCバスで充電する。実証実験を実施する自治体や企業を募り、同システムに対する災害時と平時のニーズや使い勝手を検証する。

 移動式発電・給電システム「ムービングe」として自治体などに提供する。車両は「トヨタFCバス」をベースとし、高圧水素タンクの本数を2倍に、給電口を2つに増やした「チャージングステーション」を使用する。ここにホンダの外部給電器「パワーエクスポーター9000」を2台、可搬型バッテリー「リベイドE500」を20個、「チャージアンドサプライコンセプト」を30個積載する。

 チャージアンドサプライコンセプトは二輪車の交換式バッテリーに使用する「ホンダモバイルパワーパック」を収納し、充電・給電できるように開発した試作の筐体。これらのバッテリーと車両を合わせたシステム全体の電力供給量は、50人を収容する避難所での電力使用量3日間に相当する最大490㌔㍗時となる。

 実証実験を実施する自治体はまだ決まっていないが、1日以降に災害が起こった場合、条件が整っていれば、被災地にムービングeを供給する。ただし、トヨタのチャージングステーションは路線バスのため、高速道路が走行できないほか、バスに水素を充填できるステーションが関東以外には現状ほとんど存在していないため、まずは関東圏の自治体と実証を進める見通しだ。実証実験中の費用はトヨタとホンダが負担する。実験では、災害時だけではなく、平時に活用できるニーズを見つけ出し、同システムの普及につなげたい考え。

 両社では17年に互いのFC技術を駆使し、音楽ライブで使用する電力を供給する取り組みを実施するなど「水素を通じた絆があった」(トヨタ・濱村芳彦ZEVファクトリーFC事業領域統括部長)。ホンダの岩田和之先進パワーユニットエネルギー研究所エグゼクティブチーフエンジニアは「競争ではなく共創していく」と被災地支援に向けた協業を加速する考えを示した。