全樹脂電池の展開に期待を込める安藤社長(写真右)とAPBの堀江社長(写真左)

 三洋化成工業は、子会社のAPB(堀江英明社長、東京都千代田区)が次世代リチウムイオン電池(LIB)「全樹脂電池」の実証実験を開始したと発表した。全樹脂電池の実証実験は初めてで、川崎重工業が開発した自律型無人潜水機(AUV)に搭載する。7月から開始しており、21年度中に全樹脂電池を搭載したAUVの発売を目指す。

 全樹脂電池はバイポーラ積層型のLIBで、単体セルを積み重ねて組み電池化する仕組みで、製造工程を簡素化出来ることが特徴。一般的なLIBに比べ、エネルギー密度が高く2倍以上の電池容量を確保できるため、長時間のオペレーションが可能となる。独自の構造でエネルギー密度や耐水圧性が高いことが評価され、AUVでの実証実験が決まった。連続航続距離や充電特性、耐水圧性などを試験し、実用化につなげる。

 定置用電源を軸に展開するが、全樹脂電池のコストが下がれば、将来的には電気自動車(EV)での採用も視野に入れている。ただ「まずは全樹脂電池にしか実現できない、ニッチな領域を狙いたい」(三洋化成の安藤孝夫社長)とし、定置用での実績を積み上げていく方針だ。