MC20に搭載されるネットゥーノ

 内燃機関も着実に技術進化―。伊マセラティは、9月に世界初公開するスーパースポーツカー「MC20」に副燃焼室を発展させた新技術「プレチャンバー」付きエンジンを搭載することを発表した。モータースポーツの最高峰であるF1(フォーミュラ・ワン)に由来する技術で、内燃機関の熱効率を高めハイパワー化と燃料消費量の低減に寄与するのが特徴だ。車両技術の電動化が加速する中で発表されたプレチャンバー技術。量産車のエンジンに採用されるのは世界初で、内燃機関の技術進化が継続していることを世に示すことになった。

 マセラティが新開発したのはV型6気筒3㍑ツインターボエンジン。「ネットゥーノ」と命名され、MC20に搭載される。レース用や高性能エンジンに採用されるドライサンプ潤滑システムを採用するなど、最高出力は630馬力、最大トルクは730ニュートン㍍を発揮するハイパフォーマンスエンジンとなっている。

 同エンジン最大の特徴となったのがプレチャンバーの採用だ。もともとモータースポーツで使われている技術で、F1や世界耐久選手権(WEC)といった世界選手権、国内レースのスーパーGTでも採用され、燃料流量規制の中で熱効率を高め、パワー向上を図るための技術として知られている。

 プレチャンバーは副燃焼室や副室と呼ばれる。ネットゥーノではスパークプラグの電極と従来(メイン)の燃焼室の間に副室を設置。まず副室の中で混合気を燃焼させることで、副室に設けた特殊形状の穴から火炎が噴き出し、メイン燃焼室内にある混合気を素早く燃焼させる仕組みとなっている。

 ネットゥーノではプレチャンバーを必要としない領域では通常のスパークプラグによる燃焼も行う。一般道を走る低負荷領域からサーキット走行の高負荷領域までをカバーする量産スーパースポーツカーならではの使い分けと言える。

 プレチャンバーは歴史をひも解くと、ホンダが1972年に開発した低公害エンジン「CVCC」に行きつく。複合渦流調速燃焼と呼ばれたCVCC。C(Compound)は燃焼室が主燃焼室と副燃焼室の二つがあることから「複合・複式」を表している。

 Vは(Vortex)は「渦流」の意味。副燃焼室で燃焼した火炎がトーチノズルを通して主燃焼室に噴流となって噴出。主燃焼室内に渦流を起こして燃焼速度を早める作用を示している。

 CC(Controlled Combustion)は燃焼速度を適正に制御することから「調速燃焼」を表している。

 技術精度などは違うものの、約50年を経てよみがえったとも言えるプレチャンバー。自動車産業が100年に1度の大変革期を迎え、電動化対応が求められているが、一方で、内燃機関の進化も着実に続いている。

(水町 友洋)