三菱自動車は、1970年に米クライスラーからの資本参加を前提に三菱重工業から分離独立して設立されました。自動車事業の歴史をさかのぼれば、17年に三菱造船が乗用車「三菱A型」を製造したことに始まり、32年には大型バス「ふそうB46」を完成させました。

 もともとはトラックから二輪車までを手掛ける総合メーカーとして、53年には米ウィリス社「ジープ」のノックダウン生産を行い、60年には小型乗用車「三菱500」を発売し、乗用車事業を本格化しています。90年代には「パジェロ」が大ヒットし、その後も「デリカ」シリーズや「RVR」の販売が伸びRV=三菱のイメージが定着しました。最近では2013年のプラグインハイブリッド車(PHV)「アウトランダーPHEV」など電動車戦略を加速しています。

 三菱自は三菱重工業の自動車部門としてスタートしましたが、20年3月末時点での株主構成を見ると三菱重工業の持ち株比率は1・44%と影響力が低くなっています。

 現在、三菱自の筆頭株主となっているのは日産自動車です。きっかけは16年に発覚した燃費データ不正問題でした。この不適切事案で経営が悪化した三菱自に対し、日産が出資を決め、日産・ルノー・三菱自の企業連合が誕生しました。三菱自はアライアンス内でC/Dセグメント向けPHV用パワートレインの開発をリードし、地域別では東南アジアと豪州の戦略を主導します。

 三菱自の20年3月期連結決算は3期ぶりの最終赤字となりました。19年度の世界販売台数(小売台数)は112万7千台で、日本は9万5千台、東南アジア諸国連合(ASEAN)は29万台でした。今後は欧米や中国への投資を段階的に削減し、ASEAN地域でのピックアップトラックなどコア地域・商品に経営資源を振り向けて成長する考えです。