メーカー各社はオンラインで新型車の魅力を発信した(写真はBMWコンセプトi4)
VWのクロスオーバーEV「ID.4」
ホンダ「e:PROGRESS」
アウディ「A3スポーツバック」
メルセデス・ベンツ「Eクラス」

新型コロナウイルスの影響で開催直前に中止となったジュネーブモーターショー。一方、出展を予定していた自動車メーカー各社は、オンライン上で開かれた「バーチャルプレスデー」を通じて新型車を公開した。インターネット配信によるプレスカンファレンスで電気自動車(EV)をアピールする様子は、まるで次世代ショーを先取りしたような格好となった。

自動車メーカーのないスイスで毎春開かれるジュネーブモーターショーは、“世界5大モーターショー”の中でも公平性が保たれたショーとして世界中から高い注目を集めている。バーチャルプレスデーという企画自体は今回のショーで当初から予定していたものの、スイス政府の意向により会場でのイベントが中止となった中、結果として自動車メーカーがスイスから唯一発信できる場となった。

欧州メーカーを筆頭にEVシフトを強める近年のトレンドに沿って、今回のショーでもEVの発表が相次いだ。フォルクスワーゲン(VW)は、コンパクトSUVのEVコンセプト「ID.4」を2020年から欧州、中国、米国で順次導入すると発表した。「モジュラーエレクトリックドライブマトリックス」(MEB)を採用したEVシリーズの第2弾で、同社初のコンパクトクロスオーバーEVとなる。空力性能を追求するなど500キロメートルを超える航続距離を確保。タッチスクリーンや音声認識機能などの最新技術も搭載する。発売時は後輪駆動モデルのみだが、四輪駆動モデルも追加で設定する予定。

BMWは、EVの新型4ドアクーペのコンセプトモデル「BMW コンセプトi4」を世界初披露した。エネルギー密度の高い小型バッテリーを採用し、最大航続距離600キロメートルを確保するとともに、最高出力530馬力のパワートレーンにはレアアース(希少金属)を使用しないモーターを採用し、部品単位で環境にも配慮した。独ミュンヘンの工場で生産し、2021年の市販化を予定する。

また、ホンダは、EV向けエネルギーマネジメントサービス「e:PROGRESS(イープログレス)」を2020年内に欧州で開始すると発表した。スマートフォンで必要な充電量を入力し、自宅の充電器につなぐことにより、自動的に最も電力コストの安い時間帯の充電が可能となる。同サービスは、現地で充電サービスを手がけるモイクサ社と現地電力会社のバッテンフォール社と共同で提供する。

EV以外では、アウディが第4世代となる新型「A3スポーツバック」を世界初公開した。外観は同社の最新デザインを取り入れ、コンパクトながらダイナミックでスポーティーに仕立てた。内装は10.1インチのタッチディスプレイを標準装備したほか、先代比10倍の演算能力を持つ最新のインフォテインメントシステムを採用。シート地にペットボトルのリサイクル素材を初めて採用するなど環境性能も高めた。欧州では5月から納車を開始し、まずは1.5リットルガソリンおよび2.0リットルディーゼルエンジンを設定。今後マイルドハイブリッドシステムなどを順次追加していく。

ダイムラーは、2020年夏から販売するメルセデス・ベンツ「Eクラス」の大幅改良モデルを世界初公開した。前後デザインを変更したほか、自動速度調整や渋滞時の緊急車両などにも対応した最新の運転支援システム(ADAS)を搭載。プラグインハイブリッドシステムやマイルドハイブリッドシステムなど電動車のラインアップも拡充した。

グループPSAは、プレミアムブランド「DS」の新型大型セダン「DS9」を発表した。DSブランドのフラッグシップモデルと位置付けるモデルで、全長4930ミリメートルと大柄な車体に、個性的な内外装デザインを採用した。エンジンはガソリンに加えて、プラグインハイブリッドモデルを出力別に3種類用意する。シャシーには路面状況をスキャニングしてコントロールする「DSアクティブスキャンサスペンション」を採用した。