2019GT500チャンピオン「NO.6 WAKO'S 4CR LC500」
DTMチャンピオン アウディ レネ・ラストの車両

 日欧の自動車メーカーが激突―。11月23、24日の2日間、静岡県小山町の富士スピードウェイで、世界最高峰の2大GTレース「スーパーGT」「DTM(ドイツツーリングカー選手権)」の特別交流戦が行われる。スーパーGTからはトヨタ自動車(レクサス)、日産自動車、ホンダ、DTMからはアウディ、BMWが参戦。両カテゴリーの統括団体が足かけ10年に渡り続けてきた技術規則「クラス1」の統合の成果がここに結実する。

 クラス1はマシン開発費用を抑えながら競争領域も残した統一技術規則。これまでスーパーGTを運営するGTアソシエイション(GTA、坂東正明代表)と、DTMの統括団体であるITR(ゲルハルト・ベルガー会長)が協議を続けてきた。

 交流戦の開催は両団体にとって、まさに「悲願」。18年6月に独・ノリスリンクでクラス1技術規則の完成版を公開したものの、それまでの経緯は紆余曲折の連続。09年に会合を行って以降、13年7月には国際会議「第1回ステアリングコミッティ」を日本で開催。完成に至るまで時には侃々諤々とした議論も積み重ねてきた。

 だからこそ、坂東代表の思いも強い。「最終的にジョイントイベントとして交流戦を開催しようと足かけ10年をかけて取り組んできた努力の結晶だ」と強調する。

 クラス1に則ったレギュレーションは、両カテゴリーで段階を踏んで導入を進めてきた。スーパーGTでは14年シーズンから一部を共通化した新たな技術規則を採用。DTMでは今シーズンから完全準拠したマシンを使っている。

 クラス1の特徴は、コスト低減と安全性確保を両立させる一方、競争・非競争領域を明確化した点にある。

 コスト低減についてはモノコックやリアウイング、トランスミッション、ブレーキ、ダンパーなど主要部品を「共通部品」として設定。安全性についてはFIAの安全規定に準拠させている。

 共通部品は開発費用の高騰を抑える非競争領域の措置と言える。一方、ファンの目に触れるエアロパーツは競争領域として開発に自由度を持たせてきた。

 自動車メーカーがモータースポーツ活動を行う上で大きな課題となる費用低減を実現し、ライバル会社との技術競争も可能にするクラス1。

 この共通技術規則を作り上げたからこそ、レースフォーマットの異なる両カテゴリーでの採用が可能になり、特別交流戦という晴れ舞台が整うことになった。

 とはいえ、特別交流戦の開催が最終ゴールではない。坂東代表は「GTAとITRが進めているグローバル化への大きな一歩が、両シリーズのみならず世界のモータースポーツの発展に寄与することは間違いない」と語り、クラス1のさらなる発展、拡大を視野に入れている。

 自動車メーカーにとってモータースポーツ活動は技術開発、人材育成の場であると同時に、マーケティング、ブランディング活動の場でもある。その意味でクラス1は、自動車メーカーによるモータースポーツ活動をグローバルで支えるプラットフォームとしての役割を併せ持つことが期待される。

 〈特別交流戦の概要〉特別交流戦ではDTMが使うハンコックタイヤが採用される。23、24日の両日ともに予選とスプリント形式の決勝を行う予定。四輪のタイヤを交換するピット作業を義務付ける。DTMで採用されているリアウイングの角度をレース中に変更できる「DRS(ドラッグ・リダクション・システム)、燃料リストラクターを利用して一時的に燃料流量を増やす「プッシュ・トゥ・パス」は使用しない。