3D LiDAR交差点センサー

小田急電鉄やSBドライブなどは8月21日、神奈川県・江ノ島周辺の公道で、自動運転レベル3(システムの要請に応じて手動運転)で走行するバスの実証実験を開始した。同エリアでは昨年も自動運転バスの実証実験を実施したが、今回は走行距離を延長、信号との連携や交差点センサーも加えるなど高度化した。将来の自動運転レベル4(限定地域での完全自動運転)の実現に向けて技術面や運用面、社会的な受容性を検証する。

江ノ島エリアでの自動運転バスの実証実験は、神奈川県のロボットの活用を掲げる「さがみロボット産業特区」の取り組みの一環として、多くの交通量が見込まれるセーリング・ワールドカップシリーズ江ノ島大会の開催に合わせて実施する。実証実験は8月30日まで実施するが、8月26日からは一般のモニターも試乗する。

江ノ島エリアでは昨年も自動運転バスの実証実験を実施して600人以上が試乗した。今回は県立湘南海岸公園中部バス駐車場から湘南港桟橋バス停までの片道2.0kmで、前回より900m走行する距離を伸ばした。大きな特徴は信号連携と交差点センサーの活用、路上駐車の回避、途中のバス停の停車だ。車両は昨年と同じ日野自動車の小型バス「ポンチョ」をベースに、LiDAR(レーザースキャナー)やカメラなどの自動運転システムを搭載したもので、センサー類を一部最新のものに変更した。

ルート上には信号のある交差点が5カ所には小糸製作所の子会社のコイト電工のシステムが取り付けられている。システムから「赤・緑・黄」のリアルタイムの信号の色、色が変わるまでの時間といった情報が、LTE回線を使って自動運転バスに送信される。自動運転バスは受け取った情報を解析して、交差点に進入するタイミングを制御する。

江ノ島に向かうために自動運転バスが右折する交差点には、IHIの3D LiDAR交差点センサーが備えられている。対向車の存在をレーザーでスキャンし、自動運転バスにLTE回線で送る。路車間通信であるITSコネクト向けと同じシステムだが、自動運転システムむけに情報を提供するのは初めてという。

江ノ島周辺は交通量が多く、路上駐車も多い。今回、一部ルートで路上駐車している車両がると、自動運転バスが停止し、ドライバーが後方の安全を確認してウインカーを操作すると、路上駐車車両を回避して自動走行する機能も採り入れた。

また、今回はドライバーが運転席に座り、遠隔でも監視するが、将来的にドライバーがいないレベル4自動運転バスの走行を想定して車掌を配置。モニターの予約確認、車椅子利用者やベビーカーへの対応、遠隔監視者と連携して車内外の安全を確保する。

一般車両や自転車、歩行者が行き交う公道で、自動運転バスを走行させることで、自動運転システムの技術や、自動運転バスの実用化に向けたサービスについて課題を抽出し、実用化を目指していく構えだ。