ルノー・日産自動車・三菱自動車アライアンスで小型商用車部門を統括していたアシュワニ・グプタ氏が三菱自の最高執行責任者(COO)に就任した。三菱自の今後の成長にアライアンスをいかに活用するのか。ルノーや日産にも在籍し、各社の強みや違いを肌で感じてきたグプタ氏に聞いた。

(水鳥 友哉)

[[多様性に富む人材]]

 ―三菱自の強みをどのように分析しているのか

 「競合他社より規模は小さいが、技術でも商品でも大きな価値を持っている。例えば『アウトランダーPHEV』はプラグインハイブリッド車(PHV)でトップの実績があり、4WDにおいても独自の技術を蓄積している。また、多様性に富んでいる点も印象的だ。地理、文化、性別だけではなく、(三菱グループの)商事や銀行といったさまざまな領域の才能ある人材の能力が会社の成長に生かされている」

 ―これまで3社を経験してきたが、各社の違いは

 「企業文化が大きく異なる。ルノーは創造性や話し合いを重視し、会議などもフランク。日産は日本企業だが、より多国籍企業のような雰囲気がある。三菱自も日本企業であるが、日本企業というよりも三菱グループに根ざした文化を強く感じている」

[[手を広げるより「深さ」を重視]]

 ―グプタ氏の役割は

 「ルノーの人間ではなく、三菱自の人間として、シナジー(相乗効果)を最大化し、三菱自の業績を向上することだ。小さな規模を活用するにはさまざまな資源を有効に活用しなければいけない。手を広げて全てをやるよりも深くやることに注力する方が望ましい。そのためにツールとしてアライアンスを活用する」

 「例えば、軽自動車がアライアンスの話をするのに良い例だろう。生産は三菱自、開発は日産、エンジンのベースはルノーが担っている。各社の最新の技術を融合し、市場に製品を投入できる。このほか、『エクスパンダー』で成功しているインドネシアでは日産の『リヴィナ』を生産することで、日産から規模のメリットを享受しているし、当社が『トライトン』でシェアを持っている豪州にはルノーの技術を生かして開発費を抑制した中型バンを展開する。ルノー、日産の『ものづくりチーム』と密接に連携し、できることを模索している」

 ―今後の電動化戦略は

 「アウトランダーPHEVは日本、欧州、北米で成功した。今後はサウジアラビア、アラブ首長国連邦、インドネシアにも投入する。新興国では電動車の普及が遅れているという指摘もあるが、(電動車の普及につながる)規制が整備されつつあり、市場での期待も膨らんでいる。また、三菱自は、初めての量産電気自動車(EV)を開発した会社として顧客にEVの体験を提供してきた。この強みを生かし、他のモデルにも電動技術を展開していく」

 〈プロフィル〉2006年ルノーに入社し、主に購買部門を担当。日産自動車のダットサンプロジェクト担当グローバルプログラムダイレクターなどを経て、18年に3社連合のライトコマーシャルヴィークルビジネスアライアンスシニアバイスプレジデントに就任した。19年4月から現職。1970年9月生まれ、48歳。インド出身。