スバルは10月11日、完成検査工程で不適切行為があった問題で、昨年12月14日~12月29日の期間に生産した「インプレッサ」や「レガシィ」、トヨタ自動車向け「86」など、9車種6124台のリコールを国土交通省に届け出たと発表した。スバルは9月28日、抜き取り検査での燃費・排ガス検査の不正に関する報告書で、完成検査業務においてブレーキ検査や舵角検査で新たな不適切行為があったことを公表、今回のリコールは、この不適切行為によって完成検査工程での合否判定が不明確な可能性があるためとしている。今回のリコール費用は4億円。昨年発覚した無資格者による完成検査などの一連の不正によるリコール台数は累計42万3412台で、費用は254億円にのぼる。

 スバルでは、抜き取り検査の不正について検証するため、弁護士などで構成する社外の専門チームに調査を委託し、9月28日に調査結果と再発防止策を国土交通省に報告した。報告書でブレーキ検査や舵角検査、サイドスリップ検査など、完成車の最終工程で実施される完成検査で社内規定に違反する不適切行為があったことが判明した。

 ブレーキ検査などの保安基準への適合を確認するための抜き取り検査では、不適切行為は確認できなかったことから、同日の記者会見で中村知美社長は「保安基準には適合していると考えている」と述べるとともに、「調査報告書を受け取ったばかり。もう一度(中身を)検証し、国交省にも相談した上で然るべき判断する」と、リコール実施の明言を避けていた。

 しかし、10月1日に国土交通省がスバルに対して、完成検査業務の一部が実施されていないと指摘を受けるとともに、リコールについて照会を受けた結果、今回、リコールの実施を決めたという。

 同社では「リコールを避けていたわけではない」(広報部)とし、リコール実施に踏み切ったのは、完成検査業務を定められた内容に沿って適切に実施していないことから「基準に適合していない可能性があり、顧客からの問い合わせや不安がコールセンターや販売店に寄せられた」(同)のが理由としている。同社によるとコールセンターだけで数十件の問い合わせがあったという。

 また、調査報告書で2018年1月以降、不適切行為の証言はなかったことから、リコール対象の期間は2017年の最終生産日だった12月29日までとしたという。12月14日以前の生産車については、1回目の車検を受けているか、昨年の無資格者の完成検査の不正問題の際にリコールを実施しているため、対象外とした。

 同社では「品質は今も昔もナンバーワンプライオリティー」(中村社長)としながらも、昨年から完成検査業務で次々と不正が発覚し、ブランドイメージが毀損して販売への影響も出ている。報告書が出る前の段階で「国内営業本部の感覚では、販売店への来場者数は5%程度減っている」(広報部)という。今回のリコール対応の不透明さもあって、さらに販売低迷に拍車がかかる可能性がある。